レポート4 俺は根暗なひっきーですか
俺はだてメガネをかけて部屋を出る。
おしゃれでつけてるわけじゃなく、学校で根暗キャラを演じるためと、髪まとめてない時は前髪が目に入るのを極力避けるためだ。
目立ちたくない、ただそれだけだ。
「あ、秋兄、ちわ~」
「……おう、きてたのか」
うちは家族用のリビングと別にくっそ広いリビングがもうひとつあったりする。両親が家を買うときに、知り合いから土地と空き家を安くするからそこどうだって言われて買ったらしい。
それで、俺の部屋は2階で降りてきてすぐの扉に入るとその広いリビング――というかでかい窓をあけるとテラス的になるリビングになるわけだ。
電気ついてたから適当に開けたら、見覚えのある後輩男子がいて挨拶されたわけだ。
「相変わらず、髪ながいっすね」
「お前も相変わらず金髪だな」
父さんと母さんの頃に比べれば髪の色に関しては、何か言われることは少なくなった社会だけど、それはあくまで地毛の話である。そしてこいつの地毛は黒。
「だって、髪色変化の、あのなんでしたっけ。遺伝子なんたら? っての許してくれないんすもん。今の時代じゃ格安っすよ?」
「おとなになってから自分でやれよ……たしかに安全度は8割超えたらしいけど、2割は危険なんだぞあれ」
「う~っす」
「あら? 秋、降りてきてたのね」
「降りてきてたよ」
部屋の奥――台所から表れたこの人は俺の母さんだ。
かなり自由奔放な人で、人望に厚かったりする。ちなみに家庭教師ではないが、うちのこのリビングを使って小さな塾をやっていたりして、この金髪後輩がきてる理由もそれだ。
「てか、他の人は?」
「もう帰ったわよ」
「そういうこと……」
まあ、うるさいよりは静かな方がいいからいいんだけどさ。
そんな風に話してると、玄関が開く音がした。
「ただいまー!」
「ただいま」
高い女の声と低い男の声、つまりは妹と父さんが帰ってきたな。
「お兄ちゃんたっだいまー!! って、なんだ高次もいたのか」
「あ、春先輩ちっす!!」
俺は高2で妹の春が中3、金髪の高次は中2で妹と同じ中学だ。
「おかえり。学校終わりで元気だな」
「ぬっふっふ~。あたしに任せれば、どこまでも走り続けられるよ」
「やかましいわ」
「一緒に朝のランニングしてみるかい?」
「するわけないだろ。お前のランニングはトライアスロンなんだよ。水泳と自転車もこなしちゃってるんだよ。ランニングじゃなくてランキングにでものっちまえ」
「お兄ちゃん、さすがにそれは寒い」
「うるせえ!! 父さんもおかえり」
「ああ、ただいま」
教師の父さんの帰りはそこまで遅くはないことのが多いが、今日はちょっと遅かったな――と、思ったがその手に持っているもので原因はわかった。
「着替えてくる」
「はーい」
「高次君も夕飯食べてく~?」
「いいんすか!?」
「大丈夫よ~。お母さんには連絡しておくから」
「ありがとうございまっす!」
「あ、あたしも着替えてくる~」
ドタドタと騒がしい。
「相変わらずかっこいい顔っすね」
「初対面で怖がってたやつがなに言ってんだ」
「いや、だってあの顔は怖いじゃないすか……」
「否定はしねえけど……でも手に持ってたものは可愛かったわ」
「そういえばなんか持ってっすね」
「この前テレビでやってた並ばないと買えない行列穴場スポットランキングでやってたケーキ屋のマークだった……つまり」
俺がそこまで言うと高次は笑いを堪えるようにして、ストップをだす。
「ちょ、ちょっと、それ以上は」
「可愛いだろ、うちの父さん」
「可愛いっすね……くくっ」
「ほら、並べると手伝って~」
「うい」
「はいっす!」
こうして夕飯のひと時は楽しく過ぎていった。
「それじゃ、また!」
「じゃな~」
そして高次のやつを見送った後に、部屋に戻ることにする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます