妖精に聞く!彼女の作り方
小紫-こむらさきー
第1話 イケると思っちゃったんだよなー
「やっとあったーーーーーーーー!!!! 俺の彼女の素!!!」
息を吸い込むと土と汗と草のにおい。
ジトっとした温い風が俺の頬を撫でる。
ハイキングコースを外れて少し奥へ入ったはいいが案外というか、思った通り整備なんてされてなく
さっきから泥に足を取られて転んで体中土まみれ・虫よけも汗で落ちたのかさっきから蚊に刺され放題だ。
本当に最悪としか言いようがないところだった。
この百合の花を見つけるまでは。
なんで百合の花を探していたのかってのは深い理由がある。
俺、
何を血迷ったか男子校に入学したのが運の尽きだった。
文化祭で出会いがある?
いーや、俺みたいなインドア趣味のオタクにはそんな救済はなかった。
女子が興味があるのは運動部のイケメンだけ!ということを思い知らされた高校一年時代だった。
俺には女子と知り合う環境も! 女子をゲットするだけの魅力も! ない!!!
現実は残酷だった。
現実がダメなら非現実的な手を試してみようじゃないか。
この前買ったばかりのマジカル・サモナー5ってゲームでもそんなことしてたよな。
悪魔とか妖精を召喚して恋人を作ってもらえばいいんじゃね?
という感じで夜中にありがちな妙なハイテンションでやばい思い付きをして、調べものが終わったら朝じゃん!!!
とハイテンションのまま家から自転車で20分の距離にある山で百合の花探しをしていたのだった。
我ながらやらかしたなーとは思ってる。
妖精とか悪魔とか高校生にもなってね、信じてるわけじゃないんだけど、夜中のテンションってあるじゃん?
イケると思っちゃったんだよなー。
帰り道になると徹夜のハイテンションも疲れに変わってくる。
さびれたマンションのさびれた駐輪場にママチャリを停める。
住民がおじいちゃんおばあちゃんばかりなので普段は静かだからさびれていることも悪くはないななんて思うけど、
大型連休の時だけは、帰省をしてくる人が多いのか少しだけ騒がしくなることが苦手だった。
小さな子供の声が廊下から響いていて、疲れに拍車をかける。
見慣れない女の子が隣を駆け抜けたことにもテンションが上がらないくらいのつかれだ。
あーーーー。まじで夏休みだからって何してるんだろう俺。
山でとってきたばかりの百合の花を片手に掴みながらなにもないロビーを通り抜ける。
エレベーターのボタンを押す。
いつもはすぐ開くのに夏のこの時期は少し待たされるのが少し嫌いだった。
扉が開くと、7階のボタンと閉ボタンを押して壁にもたれかかった。
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