「ネバーランド」
「ネバーランドは本当にあるんだってば! 信じてよ!」
お前 そう言ってたよな
でも俺はずっと怪訝な顔してた 今でも覚えてる
だってよ
確かに童話とかデ●ズニーが大好きなお前でも
さすがに頭を拗らせたような発言はしてこなかった
それがいきなり「ネバーランドはある!」だもの
そりゃあ びっくりしちまうよ 本当に
「疑うんならついて来てみろよ ちゃんとあるからさ」
どうやら俺をネバーランドに連れてってくれるらしい
嬉しいんだか 嬉しくねえんだか
でも俺は あえて ついて行くことにした
そう行ってお前に連れてこられたのは
関東某所のコリアンタウンにある
ちょっと薄汚レタ焼肉屋だった
おいおい お前さんよ
一体どんなジョークのつもりなんだ
お前さん まさか
本気でこの小汚い焼肉屋がネバーランドだと思ってるのかい?
お前さん とうとう頭の中がピーターパンになっちまったのかい?
頭まるごとヒーターでPAN!しちまったのかい?
でも俺は お前が本気で信じて
本当にネバーランドだと信じてここに連れて来てくれていると
そう思うと 俺は
胸の内を曝け出すことは 出来なかった
先に飲み物だけ注文した
俺は生ビールで お前はカシスなオれれれレンジ
れンれンれンじ レんレレ~~~~ん
ていうか
「ここ ホントすげえんだぜ!? マジでココは"ネバーランド"なんだ!」
お前はワクワクてかてかしながら メニューを眺める
俺は作り物の笑顔でなんとか取り繕い
ビールをごくっと 喉の奥へと入れ込んだ
「まぁ見てろって……すんませんおばさん!タン塩とカルビそれぞれ二人前で!」
お前はウキウキしながら注文した
何だか お前のその無垢で純粋な笑顔を見ていると
本当に ネバーランドなんじゃねえかって思っちまうよ
そしてついに 俺達の前に
タン塩とカルビ二人前が出された時
俺は ようやく理解した
お前が ここを
ネバーランドだと信じて 疑わない理由を
俺は 知っちまったよ
そりゃあそうだ
目の前にあるのは
タン塩と
カルビ
ではないんだ
どれもレバーなんだ
「タン塩」という名前のレバーと
「カルビ」という名前のレバーが
それぞれ二人分あるんだ
よくわかったよ
お前が「ネバーランド」だと言い張る
その根拠と理由
でもよ 正確に言うんなら
「レバーランド」じゃねえか?
もしかしてお前
「レバー」と「ネバー」、間違ってねえか?
そんな疑問が 俺の頭の中を支配してゆく
半分ほど残っていたビールをぐっと飲みほした後
何となくお前に聞いてみた
「お前の様子見る限りさ、ここ相当気に入ってるようだけど
もしかして ずっと子供で居たいとかいうスタンス?」
ちょっと意地悪な質問だったかなと思うけど
聞いてみたかったんだ どうしても
意外とすぐさま お前は反応してきたな
「ええ?いや、そんなことないよ!
決して絶対に!
レバー!レバー!」
俺の予感は 当たっていたようだ
明らかに
never(ネバー)と レバーを
間違えてやがる
でも俺は 言えなかった
「お前さん、それ言うならneverやで。」って
言えなかった
お前のその 無邪気に楽しんでいるそのサマを見ていると
俺のそのたった一言が お前の楽しみに水を差してしまうんじゃないかって
お前を傷つけてしまうんじゃないかって
俺は 怖くなってしまったのだ
本当の事を言う代わりに
俺は二杯目のビールを頼んだ
そして喉の奥から出ようとしている本当の言葉を
ビールと共に飲み込んだ
俺は レバーとネバーを間違えるお前を見ながら
ずぅっと 酒飲んでたよ
勘定終わって お前が一言
「いやー楽しかった!
またネバーランド行こうな!」
「ああ、そうだな。」
俺の一言で お前はとても嬉しそうにしていた
でも 俺のあの言葉は嘘だ
ネバーとレバーを言い間違え続けているお前と居ると
こっちまで 頭おかしくなりそうだから
頭のおかしなお前といることで
俺もその同類なのではと思われるのが嫌だったから
でも 一番の理由は
ここのレバー、全く美味しくなかったから
お前は俺の嘘で幸せそうに喜びながら
俺は偽物の笑顔の裏で 冷たい自分を蔑んでいた
以上
これまでの話は
全く以て フィクションであります
実在する団体・人物とは一切関係ございません
というのも
「焼肉屋でさすがに"ネバーランド"って名前使うところはねーだろう……」と思い
"焼肉屋 ネバーランド"と検索したら
普通にあったんで
このような形で 注釈させていただきます
ちなみにですね
このネタ……ちうか、内容?の詩はですね
ホントは 第三弾の詩集の時点で存在したんですよ
その時は下書き状態だったんですが
でね、まぁ……色々ありまして(笑)
今回ようやく、世に出すことができました
いやー…………
…………
ぉっゕれ!
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