Pメン 1
俺が20代前半の頃だ
専門学校を卒業して就職もせずにバンドをやりながらアルバイトをしていた
長続きするバイトもなく半年くらいでバイトをやめてを繰り返す
バイトをしているうちに自分のしたいことを見失う
ある朝起きたら自分の記憶がない事実に気がついたりする
今思うとメンタルが病んでいたのかもしれない
それを理由にバイトに行かなくなる
おかしい自分を楽しみながらも生活はしなくてはいけない
その内生活費に困り金を稼がなくてはいけなくなる
ゲーム機なんかを売りに出して生活費にしたりする
その金で食いつなぐついでにバイトの求人誌や週刊誌を買う
バイト求人雑誌で見つけたのが近所にあるゲームセンター「P」
時間帯は夕方から夜中の1時まで
22時過ぎは深夜割り増しがおいしい
何より頭髪が金髪ロンゲの俺には服装髪型自由がもってつけ
近所なので速攻電話をして面接の約束を取り付ける
店内は電気が薄暗く中には筐体が並び奥の方にはメダルゲーム
当時流行りだったゲームは中高生が群がっていた
自分が学生時分と雰囲気があまり変わらないので安心はしてた
UFOキャッチャーの商品がなんとなく古臭い雰囲気で店長の趣味がわかる
店長が面談をしてくれたが髪形などには一切触れず
遅番が辞めちゃったので遅番できるなら即採用、という軽さ
即日勤務をする事になる
当面は店長と勤務する事になるらしいが店には他にも社員さんがいた
社員で既婚者のKAさんは30後半のお父さん、小学校前の娘さんがいるらしい
気さくに話してくれるノリのいい人だったがよくよく聞いているとパソコンのエロゲーが大好きらしい
パソコンのエロゲーというジャンルに造詣のない俺には話すらできなかった
しかし異様にエロゲーやろうぜって進めてくる人だった
店の常連達はそのKAさんを兄貴のように慕っていた
俺と年齢が変わらないくらいのガタイの良いスポーツマンタイプのサラリーマンの常連なんかKAさんに頭が上がらない感じ
他にもいかついヤンキーぽい感じの親子連れなんかも親しげにKAさんと話したりしている
この店は昔から来ている常連達の憩いの場所である事が新入りの俺にもすぐ見て取れた
当時の俺は人見知りが激しく、常連に無愛想に対応しか出来なかった
俺が夜番として雇われそれに対して朝番のYOさんという人がいる
腰の下まで伸びた長髪がキューティクルな男性だ、ほんとに綺麗な長髪なのだ
仕事に来るとカウンターで髪の毛をブラッシングしているくらいなのだ
そして無類の綺麗好きで俺はこの姑みたいな先輩に育てられた
この人もエロゲー大好きであり俺の中では理解に苦しむ人種だった
KAさんは気さくで多彩な話が出来た人だったのだが
YOさんと言う人は自分の趣味でしか話さない人だった
アニメが大好きで今では一般的なオタだが当時は業の深いものだった
アニメといえば昔のロボット物しか出て来ない俺は会話がかみ合わなかった
幸いシフトすらもかみ合わないので仕事の入れ替わりに会話するだけなのがせめてもの救い
ただKAさんやYOさんの業の深さと言うものを見てなかったら俺は今の業界にいなかったと思う
エロゲーの為に彼らはパソコンを駆使するスキルを身につけるのだ
目的のためなら勉強する、努力は半端ない、俺もゲームや音楽の為に覚えただけに今ならわかる
店長は40も後半でパソコンも興味がない上に嫁もいるので流石にエロゲーはしない
その嫁というのが店の立場上の会長、店長が社長になるからさらにその上である
会長はたまにやってきては景品を入れ替えパチンコゲームをして帰っていく
もちろん常連さんとも顔なじみである
初めはそんなこの店をアットホームな店だと勘違いしていたものさ・・・
店側の人間に馴染み始めた頃、常連達も今まで働いていた俺の前の遅番担当がいない自体に気がつく
代わりに金髪ロンゲの胡散臭い俺がいるのだ
まぁ後で聞いた話によるとKAさんも元は金髪で俺なんか目じゃないくらい性質が悪かったらしい
常連に聞いたら暴力政治だというくらい威圧をしていたらしいのでわかりやすい
そんなゲームセンター「P」
東京に出て来て初めて、自分の居場所が出来た場所
俺はそこで働く事になった
とりあえずしばらく生活はできそうになった20代前半の冬だった
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