第四章 転生篇Ⅲ
第23話 檄! 大宇宙生徒会長騎士田翔也のめくるめく冒険バーストファイア煌
過去でも未来でもない、遠くか近くかも分からないどこかの銀河系で……。
俺こと、
大宇宙生徒会長とは宇宙の生徒会長である。
現在俺は
俺は神聖銀河を駆ける連合艦隊の司令長官であった。
目の前にはどこまでも続く星の海。
行き着く先にあるのは希望か、絶望か。
いや、絶望なんてさせない。
俺がさせてやるものか。
進むんだ、愛する故郷を守るために——。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
あの日、すべてが変わってしまった。
始まりは夏休みを控えた高校二年の七月のことだった。
突如として学園の裏山から発見された謎の古代遺跡。
それは謎の超古代文明が残したオーバーテクノロジーだった。
俺たち浮遊山学園高校生徒会は謎を解明すべく遺跡調査に乗り出すが、待ち受けていたのは謎に次ぐ謎。
遺跡は進めば進むほど謎が深まるばかりだった。
そして遺跡最深部にあったのは謎の巨大人型兵器『
八十八体の『聖顕』に呼応し、つぎつぎ謎の共鳴を始める学園の生徒たち。
彼らの身の内に秘められていた謎の力が覚醒する。
時を同じくして宇宙から謎の大艦隊が襲来、全世界の空を埋め尽くした。
「フハハハハッ!! 余は魔王!! 全宇宙魔族の覇者である。人類諸君、我らはこれより地球に宣戦布告するッ!!!!」
未知の兵器で地上に侵攻を開始する魔王の軍勢。
人類は史上かつてない脅威にさらされた。
選ばれた八十八人の生徒たちはただちに『聖顕』を起動させ、宇宙からの敵に立ち向かう。俺自身も聖顕八十八号に乗り込み魔王軍を迎え撃った。
そう。古代遺跡はいつか来たるべき宇宙の侵略者に対抗するために超古代人が造った機動要塞だったのだ。
「な、なんだその力は……っ!! ぜ、全軍撤退せよ!!! ここはいったん引いて体勢を立て直すのだ!!」
辛くも魔王を退かせることに成功した俺たちだったが地球側の被害は甚大だった。
魔王はまたやって来ると言った。
存亡の危機に瀕し絶望に打ちひしがれる俺たち生徒会役員。
そのとき遺跡の神殿から謎の少女〈
「あなたさまは古代の予言にある最後の勇者。さきほどの魔王の侵略はこれから始まる破滅の序曲に過ぎません。予言に従い、いまこそ魔王を討つのですっ!」
少女の言葉とともに遺跡が鳴動し、全体が変形を開始した。
なんと裏山で発見された部分は遺跡のほんの一部に過ぎず、浮遊山学園全体が一隻の超巨大な宇宙戦艦であったことが判明する。
古代の予言によれば、この戦艦を動かせるのは俺だけらしい。
困惑する俺の前に、実は超古代文明の存在を前々より把握していたという国連機関からの使者が俺を国連宇宙軍連合艦隊司令長官に任命した旨を伝えに来る。
「小官は国連宇宙軍の
国連宇宙軍にはすでに数十隻からなる宇宙艦隊の準備があるのだといい、俺にその総指揮を執って欲しいということだった。
そこまで言われては黙っているわけにはいかない。
このままじっとしていてもどのみち魔王は再び攻めてくるのだ。
地球を救う使命を帯びた俺は宇宙の果ての魔王を倒す宿命の旅に出発した——。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
「——ふっ。思えば遠くまで来たものだ」
「どうしたんですか、ショウヤ君。……いえ、艦長」
艦橋でひとりつぶやく俺に
彼女は生徒会副会長であり、いまは戦艦クルーの一員である。
「いやなに。地球を離れて随分経つけど、いろいろなことがあったなあって」
「なんです急に、アニメの総集編みたいなことを言って」
「……お前、アニメとか好きだったっけ?」
「お前じゃないです、ヨリコです。再藤頼子です」
……あれ?
こんなやりとり、前にもあったような……。
「……? 本当にどうしたんです?」
「ん……なんかデジャヴを感じて……」
「しっかりしてくださいよショウヤ君。あなたはいま生徒会長であり、この艦の艦長であり、国連宇宙軍連合艦隊の司令長官なんですから」
「あと、超古代文明が予言した勇者な」
「……分かってるなら、もっとしゃんとしてください」
「そうだぜ相棒! これからいよいよ魔王の本拠地に殴り込みをかけるんだ。成功すればこの上ない銀河級の名誉だぜ。だって地球だけじゃない、宇宙全土を救うことになるんだからよ!」
「アイゴ」
威勢よく俺に声をかけてきたのは
俺やヨリコと同じ生徒会役員であり、また艦隊戦力の要である
アイゴは『聖顕』に選ばれた〝勇者〟ではなかったが、それを模して建造された量産機に乗って戦う準英雄部隊のエースパイロットだった。
戦場では何度コイツに助けられてきたか分からない。
「俺っちの無双っぷりを神聖銀河にとどろかせるチャンスだからな。今回は好きに暴れさせてもらうぜ」
「わが親友ながら頼もしいな。ま、いちばん活躍することになるのは生徒会長で艦長で勇者であるこの俺だと決まっているがなっ」
「——言ってくれるぜ。でも、そうこなくっちゃな。期待してるぜ、相棒!」
「おうよっ」
俺たちは笑って拳を打ち合わせた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
俺たちの艦隊は幾度となくワープを繰り返し、地球をはるかに離れた銀河にいた。
魔王の影響は宇宙のかなり広域にまで及んでいるらしかった。
とくにここ神聖銀河は複数の星間国家を統合する広大なネットワークを形成していたが、長らく魔王軍との宇宙戦争を続けていた。
俺たちは魔王の拠点を目指すかたわらで神聖銀河に属するいくつもの星を救ってきた。
たとえば、商業惑星ウェーノル。
神聖銀河における交通の要衝たるこの星は、俺たちが到着したときには魔王軍の大艦隊に包囲されていた。
ウェーノル星は神聖銀河最大の経済特区だった。
この星を占拠されれば銀河全体の経済活動に支障が生じる。
なんとしても未然に食い止める必要があった。
ここでは聖顕五十一号を操る女子生徒将校が八面六臂の働きを見せてくれた。
最終的には物量で迫る魔王軍に対し俺の八十八号が敵全艦を撃墜した。
たとえば、超星学域シェノヴガルム星雲。
学者や宇宙冒険者が集う、星の枠を超えた神聖銀河の文教区域。
宇宙精霊の存在によって均衡を保ってきたこの星雲であったが、侵攻する魔王軍とそれを阻止しようとする神聖銀河の思惑によって戦禍に巻き込まれようとしていた。
政治的策略によって聖域を侵されようとしている現状に憤りを覚えた俺は、ある生徒が乗る聖顕五十六号を筆頭に絶対障壁を展開、時間を稼いでいる間に神聖銀河と魔王軍の両勢力に働きかけ版図そのものを書き換えた。
たとえば、吸血惑星ククポルド。
〝伝説の宇宙吸血鬼〟
戦ったなかでは地上の敵数はこの星がもっとも多かった。
しかし数はあれども個々の兵は雑魚ばかり。
俺の八十八号とアイゴの愛機が吸血鬼を一刀両断した。
英雄の前に悪は無力だ。
たとえば、巡礼異空間イェセル。
星間連絡線沿いにある宇宙宗教の巡礼地。
人間同士の紛争が絶えないこの空間では政治的仲裁に苦労した。
だが、俺の裁量を以ても結局完全な解決には至らなかった。
俺は宇宙でいちばん厄介なのは魔族ではなく人間そのものなのかもしれないという思いを強くすることになったのだった。苦い思い出だ。
たとえば、最果ての竜星。
神話級の暴竜が鎮圧されたという伝説がある神聖銀河の僻地。
魔王四天王の一雄、〝水の艦隊〟提督・
たとえば、ノゾナッハ小惑星帯。
〝星の終わる場所〟とも称されるこの宇宙海域では魔王四天王ふたりを相手に銀河史上まれに見る規模の戦闘が展開された。
のちに〝ノゾナッハの大会戦〟として歴史に名を残すことになるこの戦いのなかでは実にさまざまなドラマがあったが、そのすべてを語りつくすにはちょっと時間的な余裕が足りないかな。
たとえば、辺境惑星ラズヴィー。
神聖銀河辺境にあるラズヴィーの星は対魔王軍防衛線における鎮台の役割を果たしていたが、かねてより魔王の手に落ちてひさしかった。
惑星の住民は魔王軍の圧政下で奴隷同然の扱いを受け、長年にわたり苦しい生活を強いられていた。
俺たちの艦隊によって解放されたときのひとびとの明るい歓喜の声がいまも耳に強く残っている。
どれも俺たちが救ってきた大切な星々だ。
目をつむれば、それぞれの地で出会ったひとたちひとりひとりの姿がよみがえる。
銀河のみんなの笑顔を魔王の恐怖に染めさせてなるものか。
つぎのワープを抜ければ、魔王の棲む〝
待っていろ、魔王。
必ず俺が討ち倒して見せる……!!
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