第6話 夢の中、まるで夢の中

 


 あれからぼくは三日にあげず、あの女の子の夢を見た。


 黒いドレス。黒いリボン。

 きれいな、きれいな、ロザリンド。


 緑の丘でも、白い砂浜でも、ぼくはまるで磁石のように、その唇に吸い寄せられた。


 はっと気づくと暗い部屋の中で、ぼくはひとりなのだった。



 もしあの夢の中のぼくが、現実のぼくと同じぼくで、夢の中のロザリンドがまたあのロザリンドと同じロザリンドならば、唇がふれ合った瞬間、ロザリンドはふたりになる。


 唇を重ねれば重ねるほど、ロザリンドは増えていく。


 ああ、本当にそうだとしたら、いったいこの世界には、どれほどのロザリンドがいるのだろう。


 ぼくは悶々となって、その中のひとりがドアを叩いてくれないものかと、朝まで待ったりするのだった。



 そんなとき、ひとりの捕食者イーターが、ぼくの前に現れた。



 こんばんは。


 私がなにをいただきにまいったか、もうおわかりでしょうねえ。


 

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