Star!! Hinako side(5)
咲月が再び登場してから3曲続いた後、いったん音楽が止まった。日菜子は咲月に目で合図をした。咲月は黙ってうなずく。しばらく立ち尽くして沈黙する二人の様子を見て、観客たちのざわめきがだんだん大きくなっていく。ステージの雰囲気が変わったことを感じとったのだろう。
これから、予定通り日菜子が自らの口で活動休止を告げることになる。
(話さなきゃいけないことが沢山ありすぎるなあ)
練習はしてきたものの、気が重い。まず最初に活動休止についてはっきりと発言しようと考えている。会場は騒然とするだろうから、それから間を置いて、病気のこと、幼い頃からのことを話して。人格入れ替わりのことは流石に話せないだろう……。それから日菜子だけでなく、咲月からも今後の芸能活動について報告しなければいけない。
日菜子はもう一度咲月を見た。いざ本番となると、どうしたってプレッシャーに潰されそうになる。助けを求める日菜子の視線に気が付いたのか、咲月はやれやれと言いたげな顔をした。日菜子に体を密着させてくると、マイクに音が入らないように注意しながら言う。
「腹をくくろうや。みんな見てんで。みんなってのは、この場にいる人だけやないで。この場にいない人もニュースで見るやろうし、ひょっとしたらこれからあたしらが話しとる映像がずっとずっと先まで残るかもしれん。今はまだ生まれてもない子が将来見ることやってあるかもしれんで。どうせなら伝説になったろうやないか、なあ」
「……うん!」
咲月の言葉で、日菜子は覚悟を決めた。
今を必死に生きる輝きが、時間も空間も越えて誰かに届く。それは日菜子自身がなお美から教えてもらったことでもある。今度は自分の番だ。
日菜子は大きく深呼吸すると一歩前へ出て、マイクを構えた。会場を見渡した後、はっきりとした声で宣言する。
「皆さんにお伝えしなければいけないことがあります」
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