レンアイナツキ
@okapati
第1話 俺とオレと私
夏だ、セミが鳴いている。
ミーンミーンと、開いている窓から聞こえる夏の風物詩で俺は目覚めた。
半袖半パンで寝たのだが、既に寝汗でぐっしょりと濡れてしまっていた。
「はーアッツイねぇ……」
ベットから起き上がって横に置いてある時計を見てみる。針は朝の7時を指していた。
「とりあえずシャワーでも浴びるか」
俺は汗を吸い込んだ寝間着を脱ぎながら浴室に向かった。
『おはようございます。おはよう関西、朝のニュースをお伝えします――』
「……」
朝シャンを終えて制服へと着替えた俺は食卓について、母さんが用意してくれた食パンを食べていた。テレビでは都市部かどこかで火災が発生したとか熱中症で倒れた人が何人だとかどうでもいいニュースが流れている。
「アッツイわねぇ……」
「ほーだなー」
テレビを見ながらパンを食べている俺に、牛乳の入ったコップを両手にリビングにやってきた母さんが思わずといった感じで愚痴ってくる。
「今日も昨日と同じで熱くなるそうだから熱中症には気をつけなさいよ」
「へーい」
毎年この時期になると耳にタコができるくらい聞かされるセリフである。
……で五分くらいテレビから流れる音声とパリパリとパンを食べる音がリビングに流れて、
「ごちそうさん。じゃ、行ってくるわ」
そう言って母さんがいつものように食器を台所にもっていって、外出の準備をして出ていく。
「行ってらっしゃーい」
俺はまだ手元に残っているパンをかじりながらその姿を見送っていた。
「……ふう、ごちそうさん」
そして食べ終わった後は母さんと同じく食器を台所にもっていき、
「さて行くか」
俺もまた登校する準備を始めた。
外に出ると当然だが家にいるときよりも暑かった。朝の時点でこの調子なのだからお昼は昨日よりも暑くなるんじゃないだろうか。
「あちぃ……」
そう何度も呟く。既に先ほど来たワイシャツにはだらだらと流れる汗が染みこんできている。
はあ……とため息をつきながら道なりに沿って歩いていると自分が通っている高校へとつながる交差点が見えてきた。
そこには当然他の登校中の生徒もいるのだが、その中に見知った顔を二つ見つけた。あちらも俺も見つけたのかこちらに向かって歩いてくる。
「はよーすナツキ」
「もぉ、遅いぞー」
そしてそう挨拶してきたのが俺と同じく制服姿に身を包んだ、風原秋(カザハラシュウ)に千歳春(チトセハル)。
二人とも今通っている高校に通う以前からの長い付き合いの仲である。
「うーす、遅れてすまん」
少し待たせてしまったみたいなので軽く詫びを入れておく。
「いや全然遅れてないんだけどよ、ハルが暑い暑いってうるさくてな」
集合時間ぴったしだしとフォローを入れてくれる秋に対し、
「だって仕方ないじゃん、ほんとに暑いんだからさー」
と言いながらカバンから取り出した下敷きをうちわ代わりにして扇いでいた。どうやら結構不機嫌そうだ。まあ暑いから気持ちはわかる。
「すまんな、後でジュースでも奢るわ」
だから一番最後に来たことに対する詫びも含めてジュースでも奢ってやるかと提案してみることにした。
「え、ほんとにいいの?」
「別にいいんだぞ、そんなに気にしなくても。毎日暑いんだし」
秋が気遣ってくれるが気持ちだけで十分だった。
「暑いしそれこそ気にしなくていいから。ほら早く買って学校行こうぜ」
「おお! 夏樹ありがとー! 感謝感激!」
臨時報酬ゲット~なんて言いつつ春が俺たちより先に自動販売機に向かって駆けていく。
「俺たちもいくか」
「……ごちになります!」
そうして朝の登校中に、俺の財布からワンコインが一枚消えていった。
ちなみに俺が100mlの缶ジュースを選んだのに対し、二人とも150mlのペットボトルを選んだ。けち臭いと言われるかもしれないが二人とも結構遠慮がなかった。
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