少女列伝
阿修羅凶作
訳者序文
本作はルーマニアの高名な地誌学者ラス・ガーリの手記をまとめた短編集「The legend of the girl who was wrapped in awe in the sublime of the Atlantic Ocean」の全訳である。著者は主に気候・風土と民俗の関連について研究をしていたが、その仕事の中で生まれた数多くの論文が高い評価を得る一方、いくつかの試論はまったく無視され、嘲笑さえされることがあった。「少女列伝」にまとめられたエピソードは、この後者のものである。
この手記はルーマニア語版が初出であり、ついでドイツ語版でごく少数が刷られたというが、現在これらは散逸してしまい全文を読むことは不可能である。このことは、彼の特異な研究がどれほど無視されていたかがかいま見れる一要素であろう。よって今回本作を訳すにあたって、全文を参照できる底本として英語版を採用した。孫訳となってしまうが、これは以上のような事情があってのこと、そして恥ずかしながら、私の語学力の限界という問題もある(私は英語以外を翻訳する力はない)。
いつかどなたかが、散逸した原典を集めてまとめ、より多くの言語に翻訳し、この一度は忘れ去られた寄書を広めてくれることを願っており、また私の今回の仕事がその未来のために一石を投じたこととなれば、訳者冥利につきる。今こそ、彼が本当にただの愚かな老人だったのか、多くの目できちんと批判する時が来たのではないか。昨日の笑い者が、明日の賢者になると、誰にも否定できないのだから。
阿修羅凶作
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