危険
あの夜以来、私はシルクの人間の姿を見てない。
「シルク…。あの時、音華に何をしてたの?」
私が問いかけても、うんともすんとも言わない。その代わりに違う声が聞こえた。
「シルクはもういないよ」
私が振り返ると、ピリカがいた。
「いない…?」
「シルクは、もう寿命が無くなったの。人間でいう"死"よ。」
「シルクが…?」
私は、涙が止まらなくなった。
「紗雪ちゃん、シルクがいない、今だから話すよ。あの夜、シルクが音華ちゃんにしてた事、あれ、止めるべきだったんだよ。あの儀式は…」
「ちょっと待って!今は話さないで。」
私の涙が止まるまで、ピリカは話すのを待った。
「…で?儀式が?」
私が問うと、ピリカは答えた。
「あの儀式はね、音華ちゃんの心に…うーん何だろう、呪いみたいなのをかけたの。その呪いはね、紗雪ちゃんにもかかってるの。」
「親子2代で⁉︎」
「そう。シルクのようなぬいぐるみの一族がね、昔からぬいぐるみと人間が結ばれるように何代も重ねてきたもので、紗雪ちゃんのお母さんも、おばあちゃんも、呪いにかかってるの。
その呪いは、先代が次の世代の女の子の心に呪いをかけて、その女の子のぬいぐるみの1番可愛がられたものに魂が宿るの。そうして、人間とぬいぐるみとの距離を縮めていって、いつか結びつかせるのがねらい。
どうして結ばせようとしてるのかはわからないけど。」
「そしたら、音華にもその呪いがかかっているんだったら、音華の持っているぬいぐるみのどれかに魂が宿って…」
「そう。特に、イヌ科の動物のぬいぐるみはやめた方がいい。」
「ぬいぐるみが与えない方がいいのかな?」
「…多分無駄。保育園とか幼稚園にもぬいぐるみはあるから。呪いにかかっていると、1番気に入ったぬいぐるみに対して強い執着心が出てくるから。だから、イヌ科の動物以外のぬいぐるみを買い与えたほうがいいよ。」
「わかった。」
私が頷くと同時に、音華が泣き始めた。
午後6時半、咲夜が帰ってきた。
「ただいま。音華〜いいもん買ってきたぞ〜!」
咲夜はそう言って、音華を抱いた私に紙袋を差し出した。
「おかえり。何買ってきたの?」
私が聞くと、咲夜は笑って言った。
「じゃん‼︎音華、絶対喜ぶと思って買っちゃった!」
紙袋から出したのは…
キツネのぬいぐるみ。
私は一瞬息が止まりそうになった。
キツネって…イヌの仲間だよね⁉︎
嘘!今日ピリカに警告されたばかりなのに‼︎
音華は目を輝かせてぬいぐるみに手を伸ばした。
その日から、音華はキツネのぬいぐるみを手放さなくなった。
ー嫌な予感しかしないー
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