夜に目覚めると。
水楢 葉那
1代目 学生編
ビックリさせちゃった?
私には、ある日課がある。
朝、出かける前に部屋のぬいぐるみ30体全てに声をかけて、キスをする事。
私はぬいぐるみ大好きな女子高校生、
可愛い可愛いぬいぐるみ達がいる。それだけで幸せな気分になれる人間だ。
もう1つ、欠かす事のできないものがある。
それは、1番のお気に入りの白い狼のぬいぐるみと一緒に寝る事。
その子がいないと眠れない。
だから今まで修学旅行などのお泊りでしっかりと眠れた試しがない。
でも、まさかあんな事になると思ってはいなかった。
ある夏の暑い夜、私は目が覚めた。
目を開けると、月の光で部屋が少し明るいのがわかった。
それにしても、暑い。暑すぎる。
仕方がない、パジャマはやめて、もう少し薄着になろう。
着替えてから、台所に飲み物を飲みに行って、さあ寝よう、そう思って部屋に戻った。
すると、ベットの上には、いつもの白い狼ではなく、1人の少年が寝ていた。
これは夢?
とりあえず、触ってみよう。
私は少年の頬に指先だけ触れてみた。
すると、少年は目を開けた。
…しまった…‼︎
と思った瞬間、少年は口を開いた。
「あ。紗雪。ビックリさせちゃった?」
それはこっちのセリフだ。
「誰?何でここにいるの?何で私の名前を知っているの?」
「え?誰って…。シルクだよ。毎日一緒に寝てるのに、名前忘れたの?」
シルク?それはいつも一緒に寝ている狼の名前ですよね?
「嘘つかないで。変態‼︎シルクはぬいぐるみよ?あんたじゃない‼︎」
「んー。仕方ないか。今までは俺の事ただのぬいぐるみだと思ってたもんな。人間だった、とか言っても信じてくれねーよなぁ。」
「は?」
「まぁ、仕方ない仕方ない。さ、寝よう。明日も学校なんだから。」
そのままシルクと名乗る少年は、私のベットの上で寝た。
ん?待て待て。よく見ると、こいつ…上半身裸?
「ちょっと。」
「んー?何?寝ないの?」
「あのさ、あんた、何で上半身脱いでるの?」
「え?上半身だけじゃないよ?」
そう言って少年はベットから出てきた。
あ。本当だ。下も着てない。
って…‼︎
「ちょっと!女の子の部屋で勝手に全裸になるな!何か着てよ!」
「そんな事言われても、何も着るもの持ってないよ。」
はっ!そうか!ぬいぐるみに服着させてないからこうなった⁉︎
「わ、わかった‼︎わかったから、とりあえずこれ着て‼︎」
クローゼットから引っ張り出してきたブカブカのTシャツを投げた。
これでやっと、モザイクが隠れた…。
とりあえず、話だけでも聞いてあげる事にするか。怪しかったら、服貸して即追い出そう。
「んで?何でシルクがこうなったの?てか、本当にシルクなの?」
「うん。シルクだよ。元は人間だったんだ。でも、色々あってぬいぐるみにされちゃって…。」
「色々って?」
「…。俺も良く知らないんだけど、俺の家は、代々ぬいぐるみにされているんだ。」
「代々?」
「信じてくれないかもしれないけど、俺の話、聞いてくれる?」
わぁ。月の光に照らされて、すごくこの人が綺麗に見える。
「…。」私は少年の美しさに見惚れたまま、うなずいた。
「俺の先祖は、普通の人間だった。
でも、ご先祖は魔女の住む洞窟に間違って入ってしまった。
それで、魔女は怒って一族全員をぬいぐるみにして、街の人間に売ったんだ。
でも、魔女のかけた魔法は不思議なものだった。夜になると、人間の姿に戻るんだ。それで、こうして俺がここにいるワケだ。」
「ふーん。メルヘンだねぇ。」
「…信じてないでしょ。」
「うーん。まだよくわかんないけど、何か可哀想だから今まで通りにここに置いてあげる。」
「ありがとう。」
「ただし。私に変なことしないで。」
「わかってる。さ、寝よう。もう遅いから。」
「待って…。2人でこの1つのベットに寝るの?」
「当たり前じゃん。今までずっとそうしてきたんだから。」
「…///」
仕方なく、私とシルクは一緒に寝た。
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