ヒヤシンス
嵐 みどり
第1話 始まり
私は学校に行っていない。世間で言われるところの「不登校」「登校拒否」だ。クラスでイジめられて学校へ行くのが嫌になった。だがニュースになるような酷いイジメではないし、からかわれていただけ、そう思う。私は逃げることしかできない。我慢すればよかったのだが耐えられない。
不登校になってからは、同じ不登校の友達と毎日遊んでいた。家にこもってゲームをする日々。親からはもう呆れられていて何か言われることはなくなった、何も言われなくなったが家に居づらいのは変わらない。
同じ不登校の友達は私とは少し違うところがある。不登校の子どもが通う適応指導教室に通っている。ここでは出席日数を稼ぐことができるため、そこに毎日通えば不登校であるにもかかわらず、実質皆勤賞になる。
「お前も一緒に通えばええやん」
彼はそう言うが私は新しい場所に行くのが怖い。社会不安症。カウンセラーの先生にそう診断された。新しい場所に行くのがとても嫌で、自分がそこに馴染めるのか…変な目で見られないだろうか…そんな不安が人一倍強かった。私はここにきてまで逃げていた。
そんな私を行く気にさせることを友達に言われた。
「午前中は勉強せなあかんけど、午後からはゲームしてええんで」
これは私にとって最高の情報だった。ゲームは1日30分。母親との約束だった。ゲームが好きな私は30分じゃ勿論満足なんてするわけもなかった。ゲームができる。ただそれだけの理由で今までの不安はほとんどなくなった。その夜
「お母さん、4月から友達が言ってた適応指導教室に通いたい」
「そう、じゃあそこに連絡しておくわ」
母親はすんなり受け入れた。遊んでばかりいる私に呆れていた母親は適応指導教室に通って少しでもそんな状況が変わればいいと、そうでも考えていたのだろうか。私にはそんなこと関係ない。親の目の届かないところでゲームができる、午前中から家にいなくていいんだ。そんな自分にとって天国のような場所に毎日行けるんだ。私は楽しみで仕方なかった。私は親の約束から逃げていた。そして私の中にヒヤシンスの種が根を張ろうとしていた。
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