「………………………………はぃ⁉」

「………………………………って、私もなの⁉」

「つーかすげーよな、あの理絵さんって人。呪術界隈を知ってまだ一週間もたってねーのに、俺や佐々野の親父とかに根回しして、捜査業務を一部委託させるよう警魔庁を説き伏せやがった。今は試験導入ってことになってるけど、ありゃ絶対恒常化させる気だぜ」

「ちなみに第九調査チームは、霧子さんの第九捜査班の指揮下に置かれることになるそうです。私も後見人として出来るだけ口添えいたしますので、よろしくお願いいたしますね」

「な、なによそれー!」


 つまりこれで、瑞穂とイツデは研究所に在籍したまま呪術と向き合えることになるわけで、


「ちなみに、さっきのを承諾してたら、俺の部隊に引き抜くと守だったのは本当だぜ」


 睨まれて言い訳する霧子は、裏で理絵と繋がってたということだ。理絵が佳津子や佐々野と盛んに行っていたらしい打ち合わせも、武蔵ヶ原調査ではなくこの第九調査チーム立ち上げのためのもので――瑞穂が夏端から謹慎処分を本日言い渡されたのも、この悪戯のためだったのだろう。


「じゃ、仕事関係はそこまでにして話を戻そーぜ」


 破天荒な展開に唖然とする瑞穂へ、シレッと呼びかける霧子。


「話を戻すって、何に戻すのよ」

「そりゃあ当然、ミズホの御目に適うのが、夏端さんなのか佐々野の奴なのかについて」

「コイバナ、ですね」


 からかう気満々の霧子に同調して、キラキラと顔を輝かせた庵美が両手をグッと握り込む。

 孤立無援で包囲され、逃げ道なんて何処にもなくて、完全に追い詰められた瑞穂は五杯目の生ビールを空けるとともに悲壮な覚悟を決める。


「あー、もう! 分かったわよ、話せばいいんでしょう、話せば! すいません。ドリンクの追加いいですか?」


 料理の皿を下げに来た仲居を呼び止めて、


「生をもう一杯、お願いします(って、ちょっとペース早いんじゃない?)」

「あ、じゃあ俺はこの芋焼酎をロックで(呑み過ぎんなよ、オイ!)」

「では私は、こちらの純米酒を(この程度は許容範囲だろう)」


 それぞれ六杯目の生ビール、四杯目の焼酎、五合目の日本酒の注文を、寄って姦しくなっている三人と三台は注文する。


事件は終わり、でもそれは全ての根本的な解決には程遠く、だから影響を受けて変化しつつも日常は続いていく。

そして彼女たちの小さな同窓会も、まだまだ終わりそうになかった。

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魔女の同窓会 和間諭季 @wm_2a

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