きれいなおもちゃ
めらめら
きれいなおもちゃ
「坊っちゃま、いいかげんになさい! 旦那さまが待っておいでです!」
市場の雑踏をかき分けて大通りから路地裏に、やっと坊っちゃまを嗅ぎ付けた私は、腕組みをしてそう言った。
「ヤダヤダヤダヤダ! これがいい! これ買って~~!」
さびれた雑貨屋の前で、坊っちゃまは手足をジタバタさせながら地面にうつぶせ。いつもの通り、要求が通るまでテコでも動かないつもりだ。
「だめです! 今日はお誕生日でも創世祭でもありません、旦那様のお買い物が済んだら、すぐに帰るの!」
私にも、お世話役としての意地がある。お買い物のたびに我儘を許していては、坊っちゃまの
いいだろう、こうなったら我慢比べ。
坊っちゃまがあきらめるまで、私もここを動かない。そう決めた矢先、
「はははは、そんなにカリカリするなжжж!」
空の上から、私を呼ぶ声。
「旦那さま?」
見上げて答えた私に、
「今日はいい買い物だったよ、良質の観用銀河を沢山仕入れる事ができた!」
旦那さまは上機嫌。
「今日はおまけだ! そのおもちゃをΘΘΘに買っておあげ!」
旦那さまが坊っちゃまの名を呼んで、そう言った。
「やったー! ありがとう、お祖父ちゃま!」
坊っちゃまが地面から顔をあげると、九つの目を輝かせて、したり顔で笑った。
「くっ……!」
私は心の中で舌打ちした。
旦那さま、いつも坊っちゃまに甘すぎる!
でも……、
ふわり。私と坊っちゃまの体が浮揚する。
瞬く間に大気の外に至って、先程まで逍遥していた『おもちゃ』を見渡す私達。
蒼くて綺麗な水面。地表にトッピングされた観用種も多彩で見ていて飽きないから、坊っちゃまが駄々をこねる気持ちも、まあ解らないではない。
「決済!」
私は八本指の二指をパチリと鳴らした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
虚空に生じた巨大な買い物籠に、お買いものNo.37208892『地球』が、ゆっくりと吸い上げられていく。
きれいなおもちゃ めらめら @meramera
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