masqueraed

今宵あなたに特別に

僕の心をお見せしましょう


案外、暗くて深いから

闇に飲まれないように気をつけて


誰でも入れる心の入り口

そう、まだここは入り口


ほら

月の光で明るいでしょう?


青白い光が差し込むその先

思い出の扉がずらりと並ぶ

興味があるなら、どうぞ開けてみて

だけど

傷だらけの扉はそっとしておいてくださいな


更に奥へと進んだならば

地下へと続く、長い長い螺旋階段


もう月明かりも届きませんね


頼りない蝋燭の灯りを手に

螺旋階段を下へ 下へ

同じ場所に留まっている様な錯覚

1本道なのにまるで迷子のよう


一体どれ程 降りたでしょうか


たどり着いたのは歌劇場

繰り広げられるマスカレード

眩いシャンデリア 煌びやかな音楽

むせ返る薔薇の香り

ワルツに酔いしれましょう


そして一番 奥の奥

鍵のかかった扉に気付く


「あの扉は開けてはいけませんよ」


だけど鍵ならいつの間にか

あなたの手の中に



それはそれは 甘い罠

狂おしいほどの中毒性


その扉を開けたなら

もう月明かりの下には戻れない


僕の中で永遠にあなたを閉じ込めた薔薇の牢獄

終わらないマスカレード



今宵あなたに特別に

僕の心をお見せしましょう


案外、暗くて深いから

闇に飲まれないように 気をつけて……

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