第1098話「たとえ少女だとしても」

 俺の左手が辛うじてメイド服の袖を掴む。

 しかし、布地はお互いの反発しあう力には耐えることができずにやぶれてしまうが、その一瞬の時間を失うことで失ったものは袖だけではない。

 たかが一歩が踏み出せなかったからこそ、逃亡は阻止された。


 そして、まだ成年には程遠い少女は唐突にどこからともなく取り出したナイフで自分の首を掻き切った。

 血しぶきをあげて倒れる姿は凄惨と呼ぶにはあまりにも軽々しい。

 このまま放っておけば間違いなく絶命する。


 それは俺たちの望む形のはずであった。

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