第1071話「強運の持ち主」

「確かにアマト君が言う通り、先代が今まで積み重ねてきた功績と信頼をそのまま利用させてもらったに過ぎない。今となっては、目覚めたとき最初に出会った相手が王家の人間でなかったら私はここにはいなかっただろうね。それどころか、生きていられたかも怪しいところだよ」


「ただの人だとは言ったがな。それでも、おそらく今と状況は変わってなかっただろうな。第一、王家でなければ遺跡調査は大々的には行えなかったんじゃないか? もしもの話なんてしていても仕方がないが、世の中運がいい奴ってのは、プロセスなんて関係なくベストな結果を出すものだろ」


 ユリフィスは確かな強運の持ち主なのは間違いない。

 物語の主人公を中心にストーリーが進行するように、この国は間違いなくこの男なしでは成り立たないと言える。

 もちろん、自分以外の全ての人間を中心とした物語がある。


 しかし、大小、優越は必ず存在する。

 家から一歩も出ず、寝ているだけの人間と外を走り回り日々新しい出来事に直面する人間とでは必然的に物語の質が異なる。

 それでも、人は平等だというのなら努力することに意味などない。



 

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