第1036話「語る少女の見えない瞳」
俺は現実感のなさと、人が金で売買されることへの憤りをかくせなかった。
俺とユイナは表情を曇らせているのに対し、ほかの仲間はそうではなかった。
それは日常の一部だからこそ、倫理感が近くとも開きが出てしまう。
「それでも、逃げることはできませんでした。兄は命がけで私を逃がしてくれたのに……」
「今の国王が元凶なのか?」
「いえ……違います。兄の代わりに私を守ろうとしてくれています」
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