第924話「理に外へ」

「いまはこれ以上時間を無駄にするのも惜しい。ユイナ、戻るぞ。俺達には俺たちでやることができたようだ」


「思っていたよりも時間が経つのが早く感じるね、早く動かないと予定通りにはいかないかな」


「念のためというわけではないが、これを渡しておく。わかるだろ?」


 俺が渡されたのは手のひらに収まる程度の大きさの金印だった。

 本来であれば、国王がどこの誰とも知れぬものに渡すものではない。

 そもそもだ。紛失の恐れがあるものを個人に与えることが正気の沙汰ではないといえる。


 だが、こいつは理解を求めている。

 知っていることを知っている。

 予想はしていたが、この国といい、王といい、理に反している。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る