第912話「犬耳少女の兄だという」

「君に会えて良かった。正直、来なかったらどうするかなんて考えてなかったものだから、心底ほっとしている。改めて礼を言わせてほしい。ありがとう」


「礼を言われる覚えはないんだが。それよりも、あの奴隷商人はどこだ!? 俺が押し付けられた奴隷の少女について情報がほしっていうのに、なぜ出てこない」


「これはすまない。順を追って説明させてほしい。今ここにはいないが、私が代わりにこたえることは可能だ。あの子は私の妹だからな」


 自分の妹だというこの男は本当にあの少女の兄なのだろうか。

 犬耳の少女の兄だというのに、特徴的な耳は確認できない。

 長髪だからこそ髪に隠れているのだろうか。


「兄というのなら、なぜそんなに落ち着いていられるんだ。どれどころか、今の現状に満足しているようにさえ見える。ふざけているのか……」

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