第865話「これがこの国との違い」

「根拠も、証拠もない。それで信頼できる関係性が築けるって?」


「もちろんですとも。ですが、すぐに信じてしまうようでは私が個人的にあなた様には失望はしてしまってました。国王は無条件にあなた様を信じておられるようですが、私はそうではなかったのです」


「その、国王が何者か知らんが、俺はあいにく身分なんてものに縛られている世界に生きてこなかったんだ。いくらその国王とやらの差し金で融通されたからといって信じるには足りないな」


 民主主義といえば聞こえはいいが、それもいきすぎれば上下関係がなくなる。

 人向前は先輩後輩の関係ですら、絶対服従といっても言い過ぎではないほど立場の違いは明白であった。

 しかし、それも昔のことで能力さえあれば歳、学年、役職ですら意味をなさない。


 この世界のこの国の王がどれほどの力を有しているかわからないが、この男は対等に見ている節がある。

 立場を超えて、信頼関係がある東野ならば元世界に近い価値観がそこにはある。

 ならば、一考する価値は少なからずあってもよい。


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