第801話「Feel the wind」

「本当のボクって誰なんだろう……。今のボクはボクだけど僕じゃない。だけどボクであることは解ってる」


「今この瞬間にここにいるのが誰なのか、それを解っているなら、風を感じるならルナはルナってことじゃないかしら」


 ここは寝室、まして高級ホテルの一室なのだから隙間風などというものはない。

 結界に守られ、分厚い壁に覆われ、幾人の守りが完全に外界からの侵入を防いでいる、

 それでも、ルナは時の流れを、遥かなる風の遡行を肌に感じた。


「風を感じる」


 広い世界で出会った二人にはまだまだ話をする時間がある。

 今まで溜めこんでいたものを吐き出すように。

 ここでも、次のステージに進む道しるべが示される。


 少女が目覚めるまでまだ、時間は必用だ。

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