第779話「過酷な少年」

 物心ついた時には一人で生きてきた。

 夜というのは人間が眠りにつく時間帯で有る為、ほしいものは何でも手に入った。

 ……が、容易にものが手に入ることは決して容易ではない事である。


 矛盾しているかと言われれば事へはNO。

 質量保存の法則、等価交換などと言いようはいくらでもある。

 誰かが得をすれば誰かが損をする。


 一番の武器屋が儲かれば二番目、三番目も儲かるかと言えばそうかもしれない。

 だが、武器を購入する為にその日の食費を費やす。

 その逆もしかり、労働をするために食料、兵糧を消費するならば武器は入手できない。


 安易に手に入れた食料を手に入れるために、生産者はその労を肩代わりする事になる。

 その本質を幼いうちに理解してしまった。

 だからこそ、夜街を脅かす者の武器を奪い食料の供給を断っていた。


 誰にも気づかれることなく。

 そうでなければ、賊が今も活動などできはしない。

 故に気づかれていないのだ。


 誰からも……。 

 

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