第768話「ありもしない幻想」


「今日はもう遅い時間だ。日が昇り次第動き出してほしい。ますは、『勇者一行は次の町へ移動した』だ。今日一日で気づいたことと言えば俺達は国民から特別視されている様子はなかった。それは容姿についての情報が出回ってないからだ。一部の者達には伝わっているというのに、些妙だろ? 良くも悪くも英雄なんてものは政治利用されるにはもってこいだというのに、内々で処理しようとしている。ならば……」


「逆に利用するって事? 兄ちゃんが」


「自分の事を英雄なんて思ってひないが、そう思っている奴がいるなら利用してやればいいだろ? 勝手につぶれてくれればいい」


「それなら、英雄が街に来たってことを知らせた方が……、あっ!!」


「そういうことだ。容姿を知らないならもうすでにいなくなったが、いたという結果を残してやればいい」


 存在が曖昧なものに振り回されるのは国民だけじゃない。

 監視者も黙ってはいない。

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