第761話「ありがとう~光指す道となれ」
そう思った時。
雲の隙間から光が差し、少年照らす。
誰もがこの光景に無関心であるが故に、まるで名画を思わせるだろう切り取られた瞬間を作り出した。
この光が射した数秒間だけは俺もこの未来ある若者を導く立場の役を演じるのも、やぶさかではないと思えた。
自分という主人公が誰かの脇役になると決めたときにこそ、その人間の本質が試される。
自分本位ではなく客観的に、そして俯瞰して世界を見たとき、この物語の主人公からこの世界そのものを描くものへと昇華される。
学校の授業で先制が言っていた事の意味を体験してみて、ようやく理解した。
勉強なんて何の役にも立たないと思っていたが、いざサバイバルをして自分の力で生き抜かなければならなくなった時。
しっかりと役に立っている。
ただ生きるだけじゃない。
目の前の少年にも生きるすべを与える事ができる。
ならば、再び雨に濡れている場合じゃない。
「もう捨てるものは、何もないけど新しく捨てるものを貰える?」
「ああ。捨てられるものをやる……。言うまでもないが、敢えて言う……捨てさせはしない」
「ありがとう」
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