第727話「癒しのしずく」

 宿まで戻るころには雨音が響くだけの景色が広がっていた。

 大通りの中央に等間隔で植えられている、よく手入れされた樹木の周囲はあまり濡れていなく見える。

 これだけの大都市にもかかわらず、空気が綺麗なのはそこにある。


 車が走っていた元の世界の大都市は舞い上がる埃、タイヤとアスファルトが削れた有害な塵、排気ガスが常に健康を害する要因となっていた。

 そこに申し訳程度に植えられた木が何の役に立つというのか。

 それをここにきて思い知ることになった。


 あまりにも当たり前の風景だと気がつかない。

 雨が降り出した直後の香り。

 腕の中の少女にはどう感じたのだろうか

 

 

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