第714話「復讐に伴う」

 まっすぐ北へと向って歩いていたが、どうやらバニティーはこの先の十字路を東へ曲がってすぐの建物にいるようだ。

 幾分人が疎らになったように感じてはいるが、それでも大通りと左程道幅が変わらないこともあって何か騒ぎが起きれば大騒ぎになるのは容易に予想できる。

 それでも、覚悟を決めていくしかない。


 バニティーの気配はこのひときわ大きい5階建ての建物から感じられる。

 外観の手入れが行き届いていない風貌から凡そ数年間人の出入りはなかったものと思われる。

 それでも、元の世界にはない清潔感がある。


「覚悟はできたか? いや……」


「……」


 幾度となく、引き返すように促してきた言葉はここにきた時点で蛇足。

 スミレは俺に言葉を返すこともなく頷きドアノブに手をかける。

 本来であれば開くことのない扉なのだが、何も遮るものはなかった。

 

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