第633話「出会いは人生観を変える」

「今夜には仕上げるが。明日まで待つが」


「急ぐ必要はないと言いたいところではあるが、それはお互いさまか……」


 バニティーがこのフロアに来れたという事は相部屋なのだが、それは形だけであるのは誰の目にも明らかであった。

 受付で、鍛冶について説明を受けたときからそれは決っていた。

 設備が無ければそもそも宿に来ることもなかっただろう。


「心配には及ばないが」


「短い間だったがその腕を疑ったことはない。明日が楽しみだ……」


「……」


 そこに言葉はいらない。

 一目見たときからこの芸術家の腕に魅せられていた。

 武器に至っては刃こぼれ一つしないのだから、匠の技というものは魅了されて止まないのが世の常である。


 量産品が溢れていた世界では感じえないものの一つである。

 それを理解できたのはこのドワーフのおかげであり、人生観を変えるきっかけであった。

 出会いは良くも悪くも人を変える。  

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