第435話「ふぅ、危なかった」
危険なものを安全だと思って疑わないことがどれほど恐ろしいか想像もつかない。
ブリクスを見ても何の感情もわかないのだから、『if』という概念が無いのだ。
もしも、襲いかかってきたら、若しかしたら仲間を呼ぶかもしれないなどという事も思考の外の話である。
無論可愛いなどとも思わない。
だが、姿そのものに一種の疑問が及んだのは理から外れた概念だという固有のそれから外れたからだ。
奴の特性には穴がある。
智能も低く思考も単純なのだろう、そうでなければこちらが気がつかないうちに行動を起こすはずなのだから。
そうでなければ俺はこうは思わなかっただろう。
「ユイナ、頼む」
ユイナは返事をするよりも早くガルファールへ風を纏わせる。
俺は腰を据え居合の構えを取る。
そこからは示し合せたかのようにスペラ、ルナ、ディアナが俺の後ろへと下がった。
僅かに遅れはしたものの動き出しは三人と寸分違わず、バニティーも合わせて退避していた。
モンスターは問答無用で一閃する事をやってのける。
水平に放った剣戟は樹木を一切斬ることなくモンスターのみを真っ二つにした。
そんな事が可能なのかという疑問もあって然りではあるのだが、『かまいたち』といえばわかりやすいだろう。
稀ではあるが鎧、服は何ともないのに素肌が真っ二つに裂けたという現象が報告されている。
実際に俺自身も昔、偶然目の当たりにしたことがあったのでイメージがしやすかった。
この世界ではイメージの具体性が具現化しやすい。
それなら仲間に下がってもらう必要などないとおもうだろう。
ドドドドドッ……バサ、ドカン!!
下がらせて正解だった。
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