第414話「カルデラ湖を臨む壁」

 山だと思っていたのはカルデラ湖の周囲を取り囲むように突起した壁の先端だったのだ。

 向う岸が辛うじて確認できなければ海だと錯覚してしまうほど、広大な湖であったのだが感動を覚えたのはそこではない。

 広大な蒼空を一片の曇りもなく映し出すその圧倒的な透明度の高さだ。


 カルデラ湖とは即ち太古の時代に火山として噴火した後に、水がたまった巨大な水たまりなのだ。

 それゆえに河川の類はみられなく水の流入は一帯に降り注ぐ雨のみである。

 完全に他者と切り離された神秘の秘境であり、魚の類も本来は存在しない。


 生物の出入りが無ければ汚染する要因もないため、この奇跡が存在しえるのだ。

 そう、本来ならいない。 

 水生生物などいない。


 いないはず。

 何か見えたような気がする。

 いくら透明度が高くとも推進が深くなれば光が当たらない為、その限りではない。




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