第408話「登山開始」

 終始楽しい話題もないままひたすらに前へ前へと前進あるのみ。

 気がつけば30kmは休まず駆け抜けていた。

 近いようで中々の距離であるのは言うまでもない。


 疲れていないかと問われれば、誰一人といて疲労を否定することはないだろう。

 それでも元の世界の数百分の一の疲労感しか感じてはいない。

 無理をすれば数日は走り続けられるとさえ思えるのだから、根本から摂理が違ってしまっている。 


「少しずつ傾斜がきつくなってきてるような気がするかな。スペラはしっかりついていけてるみたいだけど、私は山登りなんてしたことないから、もう転ばないようにするだけでもやっとなんだけど……。ルナは平気なの」


「大丈夫って言いたいけど、思ってる以上に身体はついていけてないよ。アマト君におんぶしてもらわないといけなくなるかもね」


「そうしたいのはやまやまだけど、どっちかだけなんて不公平なこと出来ないだろ? まあ、あれだ。歩け」


 ルナが疲れを感じていることは予想の範疇ではあったものの、ユイナも疲労を感じていることに違和感を感じた。

 確かに、だんだんと斜面を登っているような感覚があるが山登りの経験がない為に今の状況をまるで分っていなかった。

 

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