第406話「偽幻想世界」

 日が昇って間もない。

 昨日の教訓もあり、バニティーの歩くスピードに遅れることなく寧ろ追い抜くことすら容易であるかのように軽快に進む。

 足元には人の腕よりもはるかに太い根が張っている。

 

 昨日よりもその手つかずの自然もより深みを増しているのは恐らく最深部に差し掛かったからではないだろうか。

 森という性質上中央に行けば行くほど外界との接触がないため成長を妨げるものは何もない。

 現代では島国であれば手つかずなど幻想と言っても良い。


 ここにはその幻想があるのだ。


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