第234話「パーティーのエンブレム」

 なればこのまま早急に首都へと辿り着き安全を確保したい。

 今いるこの仮設の拠点は今後何かの役に立つかもしれないので、このままモンスターが入り込まないようにしてこのままにしておきたい。


「ディアナ、ルナ。ここに俺たち以外が入れないようにしておきたい。できれば拠点ごとに連絡が取れたり移動できるようにするなんてことも出来ればと思うが可能か?」


「結論を言えば前者は今すぐにでも可能ですが、後者は今の手持ちでは不可能です。でもアマトさんならどちらもできるんじゃないですか?」


「俺が……」


「今はその時じゃないよ。ボクがそれを止めてあげる」


 ルナは俺の心の内を見通すような目をして俺の瞳に映り込む。その瞳の中に映り込む俺はどんな目をしてるのだろうか。


「結界に関してはディアナ、頼む。準備の時間とどれくらい結界が持続するかを教ええくれ。移動に関しては急を要する理由もない。とりあえずはマッピングしておけばいいだろう」


「媒介が有ればすぐできます。効力は込める魔力に比例しますが数百年は持続させておくことが可能です。壊されなければって条件がつきですが」


「それで構わないさ」


「ところで、マッピングって何なのにゃ? マーキングかにゃ」


 どちらも意味は偏に同じなのだが、スペラの言うマーキングが犬や猫の行う縄張りの証明という意味合いの強い物だという事がわかる。

 その通りだと言って、何かしでかされても面倒なので先に説明する機会ができたのは都合がいい。


「誰が見ても俺達の所有物であるとわかるように印を刻む。実際は結界によって外界からは隔絶されているのだから見えるわけはないんだが、それでいい……必ず役に立つ時が来るんだからな」


「印って何の?」


「有名ブランドのロゴのような誰が見ても印象に残るようなパーティーのエンブレム」


「アマトってブランド物に詳しかったりするの?ごめん、その辺は気にしないって思ってた」


「んっ? いや、詳しくはないし特にこれと言って贔屓にしていたメーカーもなかったな。まあ、そこがポイントなんだけど」


「それじゃあ……。なるほど、そういうことね。もうエンブレムは考えているの?」


 ユイナは俺が引き合いに出したものを追求することはなかった。ただ……いつものように促すのみ。


「これしかないって思ったんだ」


 俺は床を人差し指でなぞっていく。

 なぞった部分は真っ赤になって煙が上がる。

 一筆書きでメビウスの帯を交差させ上下左右になるように描き、床から指を高く掲げ……袈裟斬りにした。

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