第195話「敵増」
二人は並んで月明かりの元、離れ離れになった仲間を目指して歩き出した。
身体はけだるげで意識が取り残されるような感覚が襲う。
本当ならば一刻も早く合流を果たすべく駆け出していただろう。
しかし、それを許してはくれない。
目先の脅威が去った今であれば急ぐ必要もないという甘えがあるのも事実なのだが、三人の気配がある一点を中心に動きがみられないことでより一層足を重くした。
安堵していたのだ。
ユイナが二人に合流したのだから、急ぐ必要もない。
置き去りにしたことへの罪悪感よりも、生きているという事がわかったことへの安心感の方が強い。
軽蔑されたとしても甘んじて受け入れられる。
それくらいには信頼しているの。
「アマト君は気づいていたと思うけど、この辺りは周囲から観察されていたよ。7つの何らかの集団に属する者が空から確認できたけど、実際に動きを見せたのはさっき相手をした者だけ。結果を見届けてみんな元の居場所に帰っていったみたいだけど」
細かく聞いておきたい。
「正体までわかれば教えてほしい」
「ごめん、詳しくはわからない。種族や衣装からの推測で照会したわけじゃないからね。それにボクもこの世界での知識はそう多くはしらない。ルナの人生経験も長くなかったからね」
「そうか」
ルナを頼りにしすぎるのは間違っているという事はわかっていた。
この世界に常に存在していたわけではないのだと聞いている。
ディアナとも面識があったことからも、この世界が初めてではないにしろ空白期間が数百年単位であるのだから現代に疎くても仕方がない。
「ルナが雨の発生源を叩いたんだろ?」
「ただ止めただけ。結果的には敵の思うが儘になってた」
「囲まれてたのはそういう事か。なるほどな」
「ずいぶんあっさりしてるんだね。どちらにしろ結果は変わらないんだから深く考えない方がいいのかもしれないけど」
「それは違うな。結果は出てしまっていても、考えることはやめるつもりはない。
複数の組織に姿を見られている今だからこそ、冷静でなければならない。
油断すれば人間に後ろから襲われかねないのだから。
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