第65話「幕間Ⅱ~妖艶自在~」

 地震が起き、雨が降り出し、モンスターが活発に行動を開始する。

 その流れは人々の心の闇を露わにするには十分だった。


「あいつを殺せ!!」


「奴が来なければこんなことにはならなかったんだ!!」


「疫病神を見つけ出して始末しろおおおおお!!」


 あの地表を穿った揺れを引き起こした得体のしれない化物などという手の届かない脅威よりも、手を伸ばせば易々と触れることができる者を憎しみの対象にすることで村人は平穏を保とうとした。


 しかし、その対象となった者はこの場にはいない。

 その対象となるべく人物はこの小さな村に立ち寄ったに過ぎず、立ち寄った当初はまだ、地震の発生前であったこともありよそ者であること以外は特に気にも止められなかった。


 だが、恐怖とぶつけることのできない憤りの矛先を今はその場にいない者へと向けることを是としたものがいた。


「皆の者奴を殺さねば被害は大きくなるばかりだ。手分けして探し出して殺すのだ!!]

 

「村長の言う通りだ! 俺達で村を守らければいけないんだ!!」

 

「そうだそうだ!!」


「よそ者は殺せ!!」


 村長と呼ばれたものが奮起する。村人も村長の有志に狂喜するしまつ。

 誰も止める者はおらず、各自が思い思いに得物を用意すると散り散りに散らばりよそ者の捜索に向かった。


 村に一人残る村長の姿が老人から若い女性の姿へと変わる。 


「馬鹿な生き物は嫌いだわ。だって面白くないんだもの」


 妖艶な女性は鼻で笑うと、近くの民家に遠慮することなく入っていくのだった。

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