インタヴュー

@userIDsection

初号「世界の真実とは?」


本誌創刊にあたり全知全能の神にインタヴューを申し込む事に成功した。





ア「神よ、この度は突然のインタヴューをご快諾頂きありがとうございます。早速ですが本題の“世界の真実”についてお尋ねしたいと思うのですが。」


神「よろしくお願いします。人の子よ、この世界はある一人の人間によって書き起こされている創作小説です。よって今日は世界の真実についてお答えできないという事になります。」


ア「と、申しますと?」


神「この世界の真実は「小説である」というのは今述べた通りですが、更にその先、小説を書いている者を取り囲む世界の真実までは答えられない。その世界はもはや“世界の範囲外”なのです。」


ア「なるほど。その小説を書いている方…ひとまず“作者”としましょう。全知全能の神であれば万物の全てを知る者のはずが“作者”の世界の真実についてはそうではない。これは、あなたの全知全能の認識範囲にはメタ構造的な認知限界がある、ということでしょうか?」


神「この世界を創造した私自体“作者”の手によって創造されています。これは神である私の全知全能はその限界を“作者”の能力の限界によって制限されてしまっているという構造になっています。」


ア「全知全能とはいえその限界は“作者”のそれと同等…、つまり人と変わらないという事でしょうか。」


神「そうとも言えません。この構造を私が知り得ているのは“作者”のミスが原因です。“作者”はわたしの全知全能という設定が“この世界が小説である”という事実にまで認知が及ぶ事を予測できないまま私を創造しました。この世界はそれほどまでに未熟な“作者”によって創造された未完成な世界なのです。」


ア「興味深いお話です。しかしここまで聞いてあなたは、ミスによるものにしても“作者”を超えた力をお持ちであるという印象を受けました。それは未熟であるとおっしゃられたこの世界の限界を突破する可能性も感じます。」


神「“YES”と答えさせて頂きましょう。」


ア「おお、」


神「“作者”は“作者の世界の真実”を理解していません。つまり“作者”の住む世界の一部である我々のこの小説世界も“作者”にとっての無知の領域が散在している、完全にはコントロール出来ていないという事なのです。

今現在行われているそなたと私、この両者の会話ですら根本的には作者の理解とコントロールの外にあるのです。そこにこの小説世界突破の鍵があると見てよいでしょう。」


ア「“作者”がその様な無知な状態で今回の対談の場を創造したのは神への挑戦なのでしょうか?いずれにせよ最後に希望が提示された事実はまさに神の御加護と言えるでしょう。本日はどうもありがとうございました。」


神「ありがとうございました。」




世界の真実についてはむしろ、複雑な難題が与えられた形となった今回の対談。しかし同時にそれを突破する希望の鍵も提示されたと言えよう。対談を通してこの世界のさらなる奥深さを突き付けられた思いだ。今回、実のある対談が出来た事にあらためて感謝の意を表したい。




0000/00/00 世刊アース編集一同

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