第11話「最悪の邂逅」
魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。
彼女は大原佑輔に快気祝いとしてクッキーを渡し、
そのことで伊賀啓介や飯塚琴美と話をした。
放課後、克美はショッピングセンターへと向かっていた。
もちろん、中にあるゲームセンターで遊ぶためである。
制服のまま向かってはさすがに怒られるため、私服に着替えていった。
ただし着たののは辛うじて履けるジーパンに、上は箱にあった白いブラウスだ。
そしてゲーセンのメダルバンクを開けるためにそれを操作しようとする。
すると、そこに一人の少年がやってきてこういう。
「おい、先に並んでたの俺だぞ?」
「あなたは一体?私は並んでないように見えたけど」
「ふるがきれおだ。古い垣に、りっしんべんの怜、中央の央と書いて古垣怜央だ」
「名前は聞いてないわよ」
「もしかして今来たばかりか?」
怜央の質問に克美はこう返す。
「もしかして、トイレに行ってたの?」
「ちっ、可愛げのない。そういうお前は誰だ?女らしく丁寧に名前くらいは名乗って欲しいがな」
「大津克美だよ。大きい津に、克ちかつに美しいとかいて大津克美」
「だけど僕は君にそういわれる筋合いはないと思うな」
「ちっ、女の癖に恥じらいもないのか」
「『女の癖に』って!僕もなりたくてなったわけじゃ!」
すると怜央はこう続ける。
「もしかしてお前が噂の性転換者か?それともただガサツなだけなのか?」
「その物言い、もしかして同じ学校の生徒なの?」
「そうだ。芝川中学校の三年生になる」
「しかも同じ学年。でも、知らない人だ」
克美がそういうと怜央はこう返した。
「それはお互い様だ。だが、あんたはいつまでそれを続けるつもりだ?」
「いつまでっていわれても、僕にだって分からないよ!」
「女なら女らしく、はっきりしておくんだな」
そういって怜央はメダルバンクの暗証番号を入れて、静脈認証をしてメダルを引き出した。
(古垣怜央、いけすかないけど悪い人じゃなさそうだね。却ってそれが僕には痛いけど……)
そう思いつつ、克美は怜央が去ったのをみてメダルバンクの暗証番号を入れる。
静脈認証もちゃんと受け付けたため、メダルもしっかり引き出せた。
だが同じ学校の同じ学年。
自分のことをよく知らなかったためクラスは別だろうが、
ともかく古垣怜央とは最悪の邂逅をしたんじゃないか。
そう克己は感じていたため、その表情は浮かないままで。
楽しいはずのメダルゲームも、あまり楽しくは感じなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます