第9話「克美の夢」
魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。
彼は先に家へと帰っていた父親と共にレースゲームをする。
そして、レースゲームを終えた克美は台所へと向かうのだった。
「今日はチャーハンを作るわよ」
「そうだね。女の子に料理人はできないと思うけど、やれることはやっておかないと」
そうして克美はまず人参とたまねぎ、そしてネギを切る。
全てみじん切りだが、克美は丁寧にそれらを切っていく。
ベーコンをちぎる単純作業は母親の仕事だ。
「それじゃあ、行くよ」
チャーハンを作るとき普通はご飯を先に炒めることが多い。
しかし卵を温め、半熟になってからご飯をいれた方が美味しいのだという。
ということで克美はラードを中華鍋に広げ、卵を溶き入れる。
(家庭用の鍋は振っちゃいけない。火力が厨房のに比べてかなり劣るからだ)
再度そのことを反芻しつつ、克美は卵が半熟になるまで待つ。
「まだかな?」
母親が何度か聞いた時、卵は半熟になった。
「今だよ!」
克美の合図で母親が皿に用意していた白く美しいご飯が中華鍋へと踊り出た。
そして、卵とご飯が絶妙に絡み合う。
「次は具だよ。じゃんじゃん入れちゃって!」
味付けは具から水分が出たほうがいいということであり、最後の最後だ。
ある程度具が炒められたのを確認したら塩コショウとカキソース、それにナンプラーを加える。
そうして、克美とその母親のチャーハンが完成したのだった。
「できたよ、お父さん」
「ありがとうな、克美。それじゃあ」
父親の音戸によって二人は席に付く。そして三人は一斉にこういう。
「「「いただきます」」」
チャーハンを食べていると、父親はこういう。
「やっぱ美味いな、克美の料理は。料理人は男社会だが、これなら嫁入りも充分だ」
「冗談じゃないよ。料理人になるのは僕の夢なんだもん。女の子になったせいでそれを奪われた」
すると母親が割って入ってくる。
「ヤヒュニアに夢を確かめる、といわれたならそう思うのはお門違いよ」
こういわれてしまっては克美も反論はできず、
彼女は女の子になったいきさつを洗いざらい告白してしまったことを後悔した。
「ごちそうさまでした」
そして夕食も終わり、克美は後片付けをする。
「食器洗いもしっかりしないとね」
洗った食器は乾燥機にかけ、調理器具はとりあえず隅っこにおいておく。
乾燥機といっても克美は学生なので、洗った物が乾くのを待つような余裕は無い。
なので食器や調理器具を収めるのは母親の仕事となっている。
そして風呂に入ってパジャマに着替え、歯を磨いてから克美は眠りについたのであった。
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