第6話「舞踏会の幕開け」
魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。
彼女が学校に行くと、そこで男子から視線を向けられる。
飯塚琴美や自分のクラスの教師の助けもありどうにか危機を脱した克美。
しかし、昼休みのことであった。
「君が本当に克巳なのか?」
そんな彼の前に一人の少年が現れた。
「どうしたの、佑輔。インフルエンザは治ったの?」
大原佑輔おおはらゆうすけ 。克美のクラスメイトである彼とたまたま配膳室であったのだ。
もっとも、夏に珍しくインフルエンザを患って休みだったはずと克美は思っていた。
「治療証明書を出したが、今日は一応授業は休むようにいわれてな」
「そうだったんだね」
嘘を付いて学校に来たらこっぴどく怒られるはずだし佑輔は嘘を付いてないだろう、
と克美は思った。
「ともかく、お互い大変だな。俺は今までインフルエンザだったし君は朝起きたら女の子だろ?」
「朝起きたら、じゃないんだけどね……」
克美は女性化についてのいきさつを佑輔に話した。
「それと、男子に変な目で見られちゃったんだよね」
「仕方ないだろうな。俺達は年頃の中学三年生なんだし」
「分かってはいるけど、どうしても割り切れないというか……」
「まあ、分からなくはないかな。俺だって自分がお前の立場なら戸惑うさ」
そういわれた克美はこう返した。
「ありがとう、佑輔」
そして、その日の放課後。克美は王子様である伊賀啓介を待っていた。
「トランプ兵が来るっていうなら、一緒に行動した方がいいな」
「そのつもりで待ち合わせをしたんだよ。女の子になりたてで男を待つのは普通難しいし」
「まあ、その気持ちは分かる。とりあえず近くの公園に行くか?」
啓介の提案に克美はこう答える。
「そうだね。公園の方が人は少ないしのびのび戦えるよ」
「今頃の子供は公園で遊ばないからな……」
「たしかに、ゲームばっかりやらず外で運動して欲しいとも思うけど今はそれが本題じゃないよ」
するとそこにスペードの10のワッペンを胸につけた、凛々しい青年が現れる。
「シンデレラと、その王子だな。我はスペードの10、赤の女王が生み出したトランプ兵だ」
「これより赤の女王の名の元に、戦闘を申し入れる」
その青年の古風ばった自己紹介と戦いの申し入れに思わず克美はこう返す。
「ずいぶんと律儀なんだね」
「我は女王に仕える騎士。故に礼には礼を尽くす」
するとそこにヤヒュニアが現れる。
「そういえば変身の仕方を教えて無かったね。今からあいつと戦うが、油断しなさんな」
克美はヤヒュニアにこう返す。
「そうだね。ここまで律儀ということはそれだけ腕に自信もあるということだろうし」
「いや、スペードのトランプ兵は全員こうだ。まあ、あなどれないのは事実だが」
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