第10章 ヴァーゴの章 パートⅠ
ヨウフェーメー「アクベンス!馬のまま玉座の間に入るとは何事か!ん?アルレシャか。シャウラ王女は一緒ではないのか」
ヨウフェーメーも慌てて駆け上がってきたのであろうが、息を荒らすでもなく優雅な出で立ちでアクベンスの近くまで歩み寄った。
ヨウフェーメー「アルレシャ、アクベンス殿と一緒ということは……」
アルレシャ「はい。伝えてあります」
アルレシャは軽くヨウフェーメーにお辞儀した。
ジュバ国王「それでシャウラ王女は、何処におるのだ。近衛兵団を率いて城下の安全確保に努めさせたいのだが」
ジュバ国王は、書状を開かずにアルレシャとアクベンスへ問いかける。
アクベンス「国王陛下、シャウラ王女は例の男の子を探して山林へ入って行きました。青龍が力をつける前に倒さねばなりません。それには例の男の子が必要です」
アクベンスはジュバ国王の前で膝をついて深く頭を下げて伝えた。
アクベンスに習うように、アルレシャも国王の前で膝をつき頭を下げる。
ヨウフェーメーは優雅に二人に近づき、ジュバ国王に立礼して話を切り出した。
ヨウフェーメー「例の男の子とは、シャウラ王女が連れて参ったものだな。青龍が城を襲って来た時に、対峙して一緒に消えたもの」
ジュバ国王は、ヨウフェーメーを見た後、アクベンスを見た。
ジュバ国王「おお、そのものか。彼がいなければ城は破壊されておったかも知れぬ。何処に居るのだ?二人とも頭をあげよ。話し難くていかん」
ジュバ国王は玉座より起立して歩き始め、玉座の間の脇にある扉を開けさせると、中に入るようにと三人を手招いた。
そこは起立式会議室のように、中央には机が高く競り立っているような空間で四人が入ると狭い部屋に感じられた。
ジュバ国王は形式張った重いマントをハンガースタンドに無造作に掛けると書状を開いて読み始めた。
ジュバ国王「ギルタブもサンガスも早とちりしすぎる傾向があるな。中央に向かっても軍隊なぞおるまいに。まあ、これも経験か。アクベンス、アルレシャよ。書状はしかと受け止めた。この件は二人に任せよう。それよりも重大なのは青龍だ。こやつは一匹で一国を潰しかねない。どう対処する。シャウラは何をしている。詳しく説明せよ」
ジュバ国王は書状を裏返しにして、そこに書き出すようペンをアクベンスへ差し出した。
アクベンスは鳥の大群に襲われていたラムという男と遭遇したところから、アルレシャの彼氏である事を伏せたまま、今まで城に走り戻るまで起きた一部始終を事細かに書き記した。
運命の石のバランスが崩れ始め、それぞれの石が力をつけ始めたこと、青龍の探していた石をラムという男が持っていたこと、今の今まで例の男の子が青龍と戦っていたが、運命の石のパワーバランスによって例の男の子は倒され、そして今まさに青龍がラムという男から石を取り上げようと紛争していることだ。
青龍を止めるには、例の男の子の力も必要で、シャウラ王女は例の男の子が落ちた地を探しているということをだ。
ヨウフェーメー「私もシャウラ王女と共に例の男の子を探しに行こう。城は大丈夫だ。ただし、例の男の子が復活しなければ、この国は青龍に滅ぼされるやもしれない。私の力が必要だ」
私には思い当たるフシもある。今ならば例の男の子の持つ石を復活させられるかもしれない。私が行かなければ。
運命の石の力が集まりすぎている。力が有り余っている今であれば、私の石の力もまた力を増しているということだろう。
どんな命であれ救う力となっている。私の運命の石とはそういうものだ。
力が強くなっているのであれば、災害地へ行けばそこのあらゆる生命だって意のままに蘇らせることも出来よう。
ここに留まっている理由などあるものか。
ジュバ国王「神の子よ。すまない。頼む。アルレシャよ。神の子の補佐をお願いする。シャウラ王女が戻るまでの間、アクベンスは、信頼できる近衛兵を城内警備にあて、自らも城に留まれ」
ジュバ国王に命じられたアクベンスは「御意」とお辞儀をするもアルレシャが口を挟んだ。
アルレシャ「お待ち下さい。国王陛下。アクベンス殿の力が必要です。彼も運命の石を持つものです。青龍に例の男の子とラムだけでは力不足かもしれません」
ジュバ国王は無言のままアクベンスを見つめる。
ヨウフェーメー「国王陛下。私からもお願いします。アクベンス殿の力は必要です。シャウラ王女が見つかりましたら、シャウラ王女を城に戻しましょう。シャウラ王女を青龍と戦わせるわけには行きませんので、私が連れて戻りましょう」
ジュバ国王「わかった。アクベンスよ。神の子の補佐を頼む。信頼できる近衛兵にシャウラが戻るまで真摯に務めるよう指導してやってくれ」
アクベンス「御意に」
アクベンスは起立式会議室を抜け出し、近衛兵を呼び集める笛を吹いて、近衛兵部屋へと向かった。
次いで、アルレシャとヨウフェーメーが会議室から出ると、最後に出てきたジュバ国王に一礼して、アクベンスを城下の門で待つべく歩み始めた。
程なくして、近衛兵が準備しておいた早馬に、三人は跨がりシャウラ王女と別れた地点を目指し走り始めた。
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