第9章 トーラスの章 パートⅠ

アルキバを捕獲した頃、シャウラ王女たちはラムが作った急ごしらえのログハウスで休息を取っていた。

アルレシャ「アクベンス、手伝って」

アクベンス「承知した」

アルレシャは風と土の精霊を操り薬の粉を作り出し、アクベンスは火と水の精霊を操り薬の粉に火を入れて塗り薬を作り出した。

その作り出した塗り薬をラムの傷口に塗り固める。

癒やしの薬を作り出すのは高度な技量が必要で一部の薬剤師にしか出来ない。アルレシャとアクベンスはそれを共同で軽々と熟していた。

朝方になってラムの傷が癒えると早々に城へと旅立ち。シャウラ王女とアクベンスは共に城の北方を目指した。

アルレシャ「ねえ。ラム♪二人きりなんて久しぶりね。まるでデートみたい♪」

ラム「おいおい。城に書状を届けに戻るだけだぞ。それに、今起きてることは少なからず俺たちにだって関係があるんだからな」

アルレシャ「分かってるわよ。これから何があるか分からないんだから今を楽しみたいの♪」

馬にまたがるアルレシャは、前で手綱を引くラムの体に抱きついて、ふくよかな胸をラムの背中に押し当てた。

急いで城に戻らなきゃならないのは分かっているわ。でも、この短い時間でも一緒に入られることを大事にしたいの。

ラム「急ぐぞ!」

もう、ゆっくり馬を歩かせればいいじゃない。私が抱きついたら走らせるなんて、そんなに私と一緒にいる時間が苦痛だっていうの?

太ももつねってやる!

ラム「いたっ!何するんだよ!」

アルレシャ「知らない!」

暫く、馬を走らせているとラムが何かを察知して、馬を止めた。

ラム「まずい……」ラムはボソリと呟いた。

アルレシャ「どうしたの?」

何をボソボソ言っているの?聞こえないわよ。

ラムは馬を城へ向かう方向とは逆の方向に向けて走り始めた。

アルレシャ「ちょっと、どういうつもり?私は城に向かわないと」

ラム「城には行けない。あいつらはまだ城にいる。シャウラ王女に伝えに行こう」

アルレシャ「え?嘘……私が城から出てきた時は、何処にもいなかったは」

ラム「ああ、恐らく目に見えない速さで動いていたのだろう。一晩中速度を落とさず、尋常じゃないぞ。あんな奴らと遭遇なんて出来るか。書状はシャウラ王女に持たせて、オレは身を隠したほうがいい。他にも俺のことを見張っているヤツがいる」

ラムは上空を見上げた。

あの時のオオワシだわ?!

シャイン「くそっ!鴨がネギ背負って城へ向かって行くと思っていたのに、あいつ感がいいな。だが……」

オオワシは速度を上げて城の方向へと飛び去っていった。

ラム「くそっ!急ぐぞ!とにかく、シャウラ王女と合流しよう。遂に来るぞ!」

私はまたラムの背中をきつく抱き寄せた。

少し体が大きくなったメリクの尻尾に叩き落とされたジュニアは城より西にある林に落ちていった。

メリクは、また元のフクロウ大の大きさに戻る。

メリク「今、少しだけ近づいたな。分かるぞ。お前にも分かるように、我にも分かる」

オオワシのシャインが猛スピードでメリクの元に訪れた。

シャイン「メリク様!見つけました!ご案内致します」

メリク「でかしたぞ。シャイン!」

ラムがシャウラ王女の後方を捕らえようとする時、巨大な青龍メリクがその姿を4人の前に晒した。

青龍メリクはドスンと地面に地響きを与えて、シャウラ王女とラムの間に着地した。

シャウラ王女とアクベンスがその音を聞きつけ、後ろを振り返る。ただならぬ状況であることは一見して見て取れた。

精霊レオと同じかそれよりも一回りも大きな体となった青龍メリクは目に見えぬ速度は出せなくなったが、その力強さは運命の石の精霊の中でも一・二を争うものだろう。

メリクは口から石を吐き出しラムへと飛ばした。

ラムがその石を素手で受け止めると、ジュワッと手を焦がした。

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