第8章 ピーシーズの章 パートⅠ

レグリーの精霊レオが小さなサイズとなって戻って来た。

プレア「ちゃんと戻ってきたね」

精霊レオは黒い煙となりボワッという音を出してプレアの目の前で消える。

プレア「それで何か分かったの?」

レグリー「そうね。取り敢えず、大ガラスは捕まえないとダメみたいね」

レグリーはゆっくりと窓の外を眺めた。

それにつられて皆が窓の外を眺める。

4人は暫くの間、外を眺めていた。

そこに話を終えて戻ってきたスピカが加わる。

スピカによると、鳥の軍団が城を襲い、この街も襲い始めたのだということまでは突き止めた。しかし、その後に何故鳥達が散り散りにいなくなったのかまでは事情を把握していないとの事だった。

レグリー「あら?あれだけの時間でそれだけなの?スピカさんは、私たちに何か隠してるのではなくって?」

レグリーはぶつぶつと小言を言いながら、この後に話しを付け加える。

城で鳥の軍団を統制していた青龍メリクが少年に襲われ消息を絶ったというのだ、スピカはその情報を何処で手に入れた?と聞き返しながら、もしかしたらその少年が探しているジェミニが連れて行った子供なのではないかと皆に伝えた。

実は皆と合流する前に、シャウラ王女からその少年の運命の石を探して欲しいという言付けを受けていたことを皆に伝える。

しかし、スピカが聞いてもレグリーに確認を求められても、カシミールは、ジェミニが連れて行った子の運命の石については、頑なに口にすることはなく、それだけは話せないと言う。

スピカ「アイツを?大ガラスを生け捕りにするっていうのか?やっつけられるかも分からないのに」

レグリー「私の精霊ならチョチョイのチョイよ」

プレア「レグリーの精霊だと、焼き鳥になっちゃうわ」

もう、レグリーったら調子に乗ると直ぐ使いたがるんだから、他の方法があるはずよ。

キッド「僕がやろうか?」

カシミール「ダメよ。危ない。こういうのは大人の仕事でしょ。スピカさん何とかなりませんか?」

スピカ「いや、そう言われましてもね」

キッド「追い込んでくれれば、僕が木の精霊で鳥カゴ作って捕まえるよ」

私に何が出来るかな?キッドならきっと簡単に捕まえてくれるわ。

そうだ。私も大ガラスを追い込むのを手伝おう。

プレア「じゃあ、私が風の精霊使って、キッドの前に大ガラスを追い込むわ」

私の運命の石は、風の精霊よ。

レグリー「そうね。プレアは風の精霊使うの上手よね。私も風の精霊を使ってキッド君のお手伝いするわ」

私とママの力で風の精霊を使えば、どんな鳥だって羽ばたけなくなるわ。

カシミール「スピカさん。大ガラスを見つけるの手伝ってくださる?それと何処か大きな木のある場所を紹介してください。私もキッドと鳥カゴを作ってお待ちします」

スピカ「わかった。それは私が引き受けよう。そうだな。少し小高い丘がある。そこまで大ガラスを追い込もう。案内する」

一行は、スピカに着いて行き、アルカスの家を出た。

スピカ「やい!バカガラス!近くにいるなら姿を見せろ!」

スピカは皆と打ち合わせし、それぞれの場所に隠れさせ大声を張り上げながら、街中を歩き回った。

あんなやり方で大丈夫かしら?

どうか私の目の前に大ガラスが現れますように。そして、見事キッドが作った鳥カゴに私の風の精霊で……

両手を結び目を閉じてお祈りをすると、ママがそっと肩を叩いた。

レグリー「大丈夫よ。うまくいくわ」

私は両目をしっかりと開けて、遠くに目を凝らし、大ガラスが目の前に現れる瞬間を待った。

もう暗くなって来たわ?鳥目って夜はダメなのよね。

スピカ「ああ、暗くなってきやがった。夜には持ち込みたくないぜ」

スピカの後方からバサッバサッと大きな鳥の羽根の音が近づいて来る。

4人からは大分離れた場所まで来ていた。

誰からも支援は得られなそうだ。

アルキバ「お前の石。面白そうだな。オレによこせよ」

アルキバはスピカの石を気に入り、空からスピカのことをずっと見ていた。そして、一人きりになるのをじっと待っていた。

スピカは風の精霊を使い、突風を起こす。

アルキバが微妙にバランスを崩すが、すぐに体制を整えた。

バサッバサッ

アルキバ「おいおい。手荒な真似はしねえよ。それはお前の運命の石じゃないんだろ?ちょっと貸してくれりゃいいのさ」

スピカは虚を突かれた。

スピカ「俺の石じゃないだと?俺の運命の石が何かなんて、なんでお前に分かる!」

バサッバサッ

アルキバ「知らねえよ。メリクの野郎が石の力で俺たちに運命の石の匂いを嗅ぎ分けられるようにしたんだよ。それがお前のかなんてのは直ぐにわかっちまうのさ」

バサッバサッ

スピカ「分かった。じゃ、あの丘まで一緒に行ってくれたら考えてやっても良い」

バサッバサッ

アルキバ「馬鹿か!お前たちの行動をずっと空から見てたんだよ。俺をおびき寄せようなんて百万年早えっての」

バサッバサッ

突然、突風が巻き起こり、大ガラスは体制を崩して地面に足を下ろした。

アルキバ「なんだ!今の」

アルキバはチョンチョンっと陸の上を飛び跳ねて、向きを変えて後ろを振り向く。

スピカさんのあとお追いかけてて良かったわ。

プレアがスピカを気にかけならが、後を追いかけていた。

アルキバはスピカに気を取られていたため、他の四人が隠れた後にどう行動していたのかをじっくり観察していなかった。四人の中でもとりわけ、プレアは体も小柄なため、遠くの空からは目立たなかったのだろう。

風の精霊!お願い。私の願いを叶えて!

プレア「精霊!大ガラスをあの丘まで飛ばして!」

小さな竜巻が地面に出来上がると、ぐるぐると回りながら大きさを変えて大ガラスの周りを一つ、二つ、三つと数を増やして近づいていく。

アルキバは、地面に足を下ろしたまま、チョンチョンと少しずつ飛びながら、飛び立とうとはせずに右へ左へと移動した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る