第4章 サジテリアスの章

シャウラ王女「スピアにこの仕事を依頼して、褒美はいつもの倍出す」

アクベンスは一礼すると書状と共に城を後にした。

町人「お~い。スピア~。客人だぞ~」

スピカ「だから、スピカだ!カ!アじゃね~」

ったく、なんで覚えられねえんだよ。みんなワザと間違えてるとしか思えねえ。

この街一番の大富豪スピカ様の名前をワザと間違えるなんて呪ってやる!一生金に苦労しやがれ!

アクベンスが書状を託した配達人がスピカの元に着いた時には、既にギルタブがジェミニの精霊に苦戦し、後退を初めていた頃だった。

ちょうどその時、カシミール一行がスピカの元を訪れていた。

カシミール「この街の情報屋さんって聞いて来ました。ある人、うちの主人と息子を見つけて欲しくって」

スピカはご婦人二人と子供二人を見てから「ちょっと待ってください」と言い軽く手を上げ、封書を見せた。

その封書にはアンタレス国の刻印が刻まれていた。お国からの重要な仕事の依頼だということをさっと諭す意味で封書を見せ、すまないと言いたげに部屋に入っていった。

町人「すまないね。タイミング悪く、配達人と被っちゃってさ」町人はそう告げると、「待ってりゃ出てくるさ。んじゃ、後はよろしく」と言ってその場を去った。

人探しなどという仕事は俺にとっては朝飯前だ。直ぐに解決してやると、この時は意気込んでいた。

それがこんな形ですれ違うことになるなんて、この時の俺には想像も出来ていなかった。

シャウラ王女からの書状を開き、街の情報を提供するという仕事は、何年も前から続けている。今に始まったことではないが、何か急を要する事でもあったのだろうか。

書状には石を持たない少年を見つけた、その少年の石探しと同時に少年の行方不明者が街にいないかを探って欲しいという内容だった。

さっきの町人と話がどうやら被るようだと直感した。

なんて容易い仕事なんだ。俺の運は最高だな。

仕事が雪崩式に舞い降りて、時間がそれを解決へと導く、これで何年も食べていけるだけの富が俺の懐に舞い込んでくる。

さっきの町人たちにはこの書状の内容は伏せておいてだ。

共に探すことにして、しびれを切らして諦めそうな時に、城に向かうことにしよう。

当面、ギルタブがサンガスと入れ替わる頃には、城への道も遮断されて通れなくなっているだろうし、街の外側で何が起こっているのかを調査して知らせるのも俺の仕事ではあるのだから、さっきの町人4人を引き連れて、国中を一周でもしよう。

もしかしたら、その間に別の探しているという父と息子に偶然出会うなんてことだって良くあることだしな。

この書状に書いている少年とその息子って言う人物が同一人物ってことも、まあ期待薄いかもしれないしな。

大体、人の運命の石を探すなんて仕事は、今回初めての依頼だ。

遠くはなれた所に置き忘れれば、その人間は確実に石とともに命を落とす。石も自然石に変わってしまう。時間が経てば、シャウラ王女の探している石は無くなり、少年も亡くなるかもしれない。

急ぐ必要は無いだろう。いつも大丈夫。時が解決してくれる。

俺は扉を開けて町人4人と対面した。

カシミール「お忙しいのにすみません。先ほどお話した事ですが」

カシミールが話しを切り出そうとしたのを遮り、スピカから提案を持ちかけた。

スピカ「ああ、大丈夫。話はさっき聞きました。それでなんですが、お金の話の前にお願いがありまして、私、これから旅に出なければなりません。最近、街の騒がせている精霊の反乱とでもいいますか?あれの調査にですね。で、そこで皆様にも旅のお供をお願いします。いえ、一人が寂しいからではなくてですね。共に探し人の情報を探して回りませんか?ということなんですね。まあ、ご心配なさらずとも直ぐに情報は集まりますよ。私も長年、情報屋やってますから、あたりはあるんですね。こういうことはまず何より行動ですよ。そうでしょ?え~っと」

カシミール「カシミールです。私の名前はカシミールと申します。」

話に詰まっていると代表者らしき女性が名前を教えてくれた。このカシミールという方の旦那さんと息子さんを探せば良いのか。

スピカ「そうでしょ?カシミールさん。ところで、旦那さんと息子さんの似顔絵とかありますか?」

人探しに必要なのは、その人物の容姿であり、どんなことをするのかという人格が最も重要ではある。まあ、今回はその辺り真剣に聞かずとも良さそうだが、お城の少年と同じ人相かどうかを調べるのにも役立つだろう。

カシミール「ありません」

頭を垂れて申し訳無さそうにしている女性とは対象的な印象のもう一人の女性が話しだした。

レグリー「カシミールはね。あっ、私の名前はレグリーね。カシミールの子供は赤ん坊の時に父親と別れたの。父親は似顔絵を残すことが好きな人じゃなかったから、二人共の似顔絵は手元にないのよ。ちょっと、ある入れ違いが起きてね。二人共別れる必要なんてなかったのに、子供も大きくなったし、ね!キッドくん。それで探す旅をしようってことになったんだけど、どう探したらいいのかもわからない状態で、なんとか見つけられるのかしら?」

聞いてもいないことをベラベラと喋る女性だが、まあ要するにこの子供と兄弟ということか。

スピカ「息子さんはどちらに似ておりますか?父親ですか?息子ですか?」

レグリー「キッドくんは、息子と双子の兄弟だから、きっとそっくりだと思うわ。父親とはどうなのかな~。ほら、キッドくんってカシミールに似てるじゃない。だから、父親と言うよりかはね」

要するにあまり分からないのだな。まあ、無理も無いか。双子だからといって顔が同じだという保障もないが、何も無いよりはマシだろう。

スピカ「それで先程の私からの提案なのですが、よろしいでしょうか?あまり手がかりがない状態のようですし、人探しには十分な旅になるかと思います」

カシミールはスピカの提案をのみ、スピカの旅に同行することになった。

カシミール一行の旅のリーダーはここで、スピカへと変わった。

そのスピカ一行は、明日ギルタブが衝突している場所を避け、少し離れた安全な土地を目指し情報収集することに合意した。

この時より、スピカ一行はジェミニより遠ざかりジュニアに少し近づいていく道のりを歩き始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る