終幕→ゼロから紡ぐ物語
凉菜琉騎
第一章 眼帯少女との出会い
プロローグ
それを目にした途端に、突如テレビの電源が落ちたような感覚を体験し、目の前がブラックアウトする。後には絶望という感情が残留し、“そいつ”は絶望という糧を目の前にして、凶悪に嗤う。
しかし、”そいつ”はそれだけで満足せず、もう一度絶望を与えた。
一度目は何もできず絶望し、
二度目は足掻こうとするも絶望へ向かい、
三度目は必死に奔走し、策を練ろうが、最終的には絶望し、
回避するために藻掻いて、最終的に絶望を視せられた時の顔、
何度も挫け折れそうになった時の心、
それがたまらなく愉悦で、愛おしささえ感じていた。
「――――」
”そいつ”は悪魔じみた歪んだ笑みで愛を囁いた。
これから先、彼は理由も知らず何度も訪れる絶望を味わわせられる趨勢を、”そいつ”は楽しみに、いつの日か、邂逅する日を待望し、彼の前に姿を現す日まで。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
彼は一度目の絶望を体験したのは、悲惨的で残酷な場面。口にするのも悍ましい光景。
辺りは真っ暗闇で、その場に充満するむせるような血の臭い。
彼はそんな非日常とは無縁で、少なからず体験するなら殺人現場に居合わせるくらいだが、それも確率的に皆無に等しい。しかし、彼が実際に居合わせたのは、殺人現場より異常な場面。
願わくば、これが夢であって欲しいと切望する。
非日常は彼の知らない外側で偶発する出来事だと、決して彼はそこへ干渉しないとずっと思っていた。いや、既にこの世界に来た時からもう非日常を経験している。
――どこで選択肢を間違えた?
彼の精神はとっくに限界を超えて、豚のように醜い姿を晒して泣き叫び、助けを呼び、懇願していた。
その人の皮を被った――いや、人ではない化け物は平然と、親しみのある友人のように彼に話しかけてくる。
彼は必死に、無様に、地面に頭を擦りつけて懇願して、彼の耳に化け物の声は届いていない。
それでも化け物は話し続ける。
――どうして? どうして俺はこんなことに巻き込まれているんだ?
そんな問いに答える人は……もういない。
――何で俺なんだよ?
彼は、彼女の原型が留まっていない残酷な亡骸と視線がぶつかった。その瞬間、吐き気が込み上げてきた。だが微かに残った理性が、彼女に対して失礼と感じた彼は無意識に異物を無理矢理引っ込めた。
そんな彼を化け物は嗤う。
彼は化け物に恐怖心を抱いて、豚のような醜態を晒しておきながら、壊れかけの心の奥では怒りを滾らせた。
――こんなはずじゃなかった!?
もう二度と、彼女の笑顔を見ることも、声を聞くことも、触れることも、瞳の色を褒めることもできない。
化け物の狂ったような嗤い声が暗闇の中、不気味に反響し、悪魔じみた姿を目にして、化け物が口を開けて近づいてくる。
化け物に恐怖で震えながら彼は懇願を繰り返して――――遺恨を残し、化け物を呪った。
そして彼の意識はそこで途絶える。
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