「ミーアキャットのパン屋さん」

「ミーアキャットのパン屋さん」１

　サバンナに住（す）む　ミーアキャットたちはとても早起（はやお）き。

　毎朝（まいあさ）お日（ひ）さまが顔（かお）を出（だ）すのと　同（おな）じくらいに表（おもて）に出（で）て、家族（かぞく）全員（ぜんいん）でお日（ひ）さまに向（む）かってせいれつします。

　こうすることで、お日（ひ）さまのねつをおなかにあびて　体（からだ）を早（はや）く暖（あたた）めます。

　ふわーーーーあ　　　ふわーーーーあ　　　ふわーーーーあ

　一人（ひとり）があくびをすると、つられてみんなもあくびをしました。

　でも、なんだか　まだねむたそうな子（こ）がいますよ。

　すーー、すーー、こてん。

　いちばん小（ちい）さなパニーニが　横（よこ）になりました。

　体（からだ）が暖（あたた）まると　さっそくお仕事（しごと）です。

　ミーアキャットは　二組（ふたくみ）のふうふとその子供（こども）たち、合計（ごうけい）で１６人（にん）がそろって　くらして、パン屋（や）さんを開（ひら）いています。

　お父（とう）さんお母（かあ）さんたちは　しごとばに入（はい）ると　おそろいの小麦色（こむぎいろ）のエプロンをつけます。

　二人（ふたり）のお父（とう）さん、グラハムとメイズは小麦（こむぎ）やお米（こめ）、トウモロコシの粉（こな）に水（みず）やお砂糖（さとう）、塩（しお）や卵（たまご）を入（い）れて、よくこねて生地（きじ）を作（つく）ります。

　二人（ふたり）のお母（かあ）さん、ライとリファリーヌは　できた生地（きじ）を丸（まる）めて　鉄板（てっぱん）に並（なら）べていきます。

　石（いし）でできた大（おお）きなかまどに　パン生地（きじ）を入（い）れるのは　お父（とう）さんたちの役目（やくめ）。

　まきを燃（も）やして、大（おお）きな木（き）のへらで鉄板（てっぱん）を次々（つぎつぎ）に入（い）れていきます。

　ごぉーー　ごぉーー　じゅーー　じゅーー　

　生地（きじ）はふくらんで　きれいなきつね色（いろ）のパンがたくさん焼（や）けました。

　焼（や）きあがったパンをお店（みせ）に並（なら）べるのは　お母（かあ）さんたちの役目（やくめ）。

　平（ひら）たいかごの中（なか）に同（おな）じしゅるいのパンを入（い）れて　お店（みせ）のたなに並（なら）べていきます。

　もうすぐ開店（かいてん）十分（じゅっぷん）前（まえ）。じょうれんのお客（きゃく）さんはお店（みせ）のドアの前（まえ）に行列（ぎょうれつ）を作（つく）ってまっています。

　ガラスまどごしに見（み）える　たなにならんだ　パンはどれもおいしそう。

「「お待（ま）たせしました、いらっしゃいませ」」

　お店（みせ）が開（ひら）きました。ドアを開（あ）けたしゅんかん、パンのいい香（かお）りが広（ひろ）がります。

　たなにならんでいるのはたくさんの種類（しゅるい）のパン。

　食（しょく）パンにフランスパン。バターロール、クロワッサン。

　それにメロンパンやチョコレートコロネ、ジャムパンにクリームパン。

　フランクドッグ、コロッケパンにカレーパン。

　さまざまなパンを　お客（きゃく）さんたちはたくさん買（か）っていきます。

「「ありがとうございました」」

　その間（あいだ）、子供（こども）たちは　お父（とう）さんお母（かあ）さんの代（か）わりに　おうちのことを手伝（てつだ）います。

　おふとんや毛布（もうふ）を　たたんでしまったり、そうじをしたり、朝（あさ）ごはんの用意（ようい）をしたり。

　朝（あさ）ごはんがすむと　こんどは二手（ふたて）に分（わ）かれて、パンのざいりょうのこなと　パンをやく　たきぎを　とりに出（で）かけます。

　グラハムとライの子供（こども）たちは大（おお）きなにぐるまを　三人（さんにん）で引（ひ）いてのこり三人（さんにん）でおしてサバンナをすすみます。

　よいしょ　　　よいしょ

　森（もり）のきこり小屋（ごや）につきました。

「こんにちは、ジゼポさん。これ、たのまれてたパンと　はちのすワッフルです」

「おう、ありがとうよ。こっちがたきぎだ。かわいてるから良（よ）くもえるぞ。父（とう）ちゃん母（かあ）ちゃんたちによろしくな」

「どうもありがとう」

　グラハムとライの子供（こども）たちは　荷車（にぐるま）にいっぱいのたきぎをつんで森（もり）のきこり小屋（ごや）から　サバンナにもどります。

　　　―――――

　メイズとリファリーヌの子供（こども）たちは大（おお）きな荷車（にぐるま）を　三人（さんにん）で引（ひ）いて　のこり三人（さんにん）でおしてサバンナをすすみます。

　よいしょ　　　よいしょ

　サバンナと森（もり）の間（あいだ）の風車（ふうしゃ）小屋（ごや）につきました。

「こんにちは、フリッカさん。これ　たのまれてたバゲットと　かえでスコーンです」

「うんありがとう。これが小麦粉（こむぎこ）にとうもろこしの粉（こな）、それからお米（こめ）の粉（こな）だ。お父（とう）さんたちによろしく」

「どうもありがとう」

　メイズとリファリーヌの子供（こども）たちは、さまざまな粉（こな）が入（はい）ったふくろを荷車（にぐるま）につむと　風車（ふうしゃ）小屋（ごや）からサバンナに帰（かえ）ります。

　お使（つか）いがすむと　子供（こども）たちみんなであそびます。一人（ひとり）は必（かなら）ず高（たか）いところに立（た）って　見（み）はりをします。

　今日（きょう）の見（み）はりはプレッツェル。

　プレッツェルは　詩（し）を作（つく）るのがとても大好（だいす）き。

　天気（てんき）やその日（ひ）　見（み）たふうけい、気（き）づいたこと、その時（とき）の気（き）もちを詩（し）やうたにして　口（くち）ずさんでいます。

　子供（こども）たちは穴（あな）をほって　きれいな石（いし）を見（み）つけたり、コオロギをおいかけたり。

　シャーーーー

　あっ、岩（いわ）の下（した）からサソリが出（で）てきました。みんな体（からだ）の毛（け）をさかだてて　けいかいします。

　クァアーーーー！

　グラハムの長男（ちょうなん）のバゲットが　おそれずに立（た）ち向（む）かいます。しっぽのはりにさされないよう　しんちょうにこうげきします。

　ばしっ

　上手（うま）くパンチが当（あ）たりました。サソリは弱（よわ）ってふらふらです。

　バゲットは弟（おとうと）のクッペに向（む）かって言（い）います。

「さあ、お前（まえ）がたおすんだ。弱（よわ）ってるけどゆだんするなよ」

「うん、やってみる」

　ばしっ　　　　　シャーーーー　　　さっ　　　　　ばしっ

　クッペは手（て）こずりながらも　なんとかサソリをたいじしました。

「よくやった」

　バゲットはクッペのあたまを　かしかしとなでます。

　そのようすを　兄弟（きょうだい）で一（いち）ばん　やんちゃなロゼッタが見（み）ていました。

　子供（こども）たちがあそんでいるあいだ　お父（とう）さんお母（かあ）さんたちは　パンに入（い）れるざいりょうを買（か）いに　町（まち）に出（で）かけます。

　市場（いちば）やお店（みせ）でお砂糖（さとう）やカレー粉（こ）。ミルクやバター、ジャム。色（いろ）んなものを買（か）います。

「今日（きょう）は　調理（ちょうり）パンを多（おお）めに作（つく）ろうか」

　お父（とう）さんたちはソーセージやハムを買（か）います。

「買（か）いに来（く）るお客（きゃく）さんは甘（あま）いものが好（す）きだから　菓子（かし）パンも作（つく）りましょう」

　お母（かあ）さんたちは生（なま）クリームやチョコレートも買（か）います。

　「よし、そろそろお店（みせ）にもどろう」

　お父（とう）さんお母（かあ）さんたちは　パン屋（や）にもどりました。

　子供（こども）たちはあそびおわると　おひるごはん、それからおひるねです。

　こんどはサリーランが　見（み）はりをします。右（みぎ）、左（ひだり）、前（まえ）、後（うし）ろ。

　時（とき）には上（うえ）、空（そら）を見上（みあ）げておそってくるワシや　きょうぼうなどうぶつがいないか、けいかいしてあたりを見（み）ます。

　ふわーーーーあ　　　ふわーーーーあ　　　ふわーーーーあ

　一人（ひとり）があくびをすると、つられてみんなもあくびをしました。

　なんだか　ねむたそうな子（こ）がいますよ。

　すーー、すーー、こてん。

　いちばん小（ちい）さなパニーニが　横（よこ）になりました。

　みんなはほった穴（あな）の中（なか）で　ゆっくりお昼（ひる）ねしています。

　―――――

「さあ、そろそろ夕方（ゆうがた）の　かいてんじかんだ。お店（みせ）にもどりましょう」

　マフィンがみんなを　せいれつさせて　にんずうをかぞえます。

「いち、にー、さん……」

　一人（ひとり）一人（ひとり）をゆびさしてかぞえていきます。

「１０、１１、……？」

　自分（じぶん）を入（い）れて　なんどかぞえても１１人（にん）しかいません。

「ロゼッタがいないよ！」

「本当（ほんとう）だ！　ぼくが父（とう）さん母（かあ）さんたちに　知（し）らせてくる。

　みんなはさがしに行（い）ってくれ。

　ばらばらにならないで　みんないっしょにさがすんだ！」