第14.4話

「なにこのソース!? 豆乳みたい!」

「いけるな! これ豆腐すり潰したやつみたいだぜ!」

「え、これお豆腐なの!?」

「そうそう。豆腐をすり潰してソースにしたらしいぜ」

「本当に豆乳みたいだね~」

「まぁ、どっちも元は大豆だもんな」

「お豆腐なのか~、沙羅魅豆乳かと思ったよ~」

「だな」

「まさかこれがお豆腐だったなんてね~」

「だな」

「本当に豆乳みたい!」

「そろそろ他の感想も言えよな」

「豆乳! かと思ったらお豆腐!」

「おめぇさっきからそればっかじゃん!」


「すごいよこれ! きっとみんなだまされるよ!」

「いやいや、メニューに書いてあんだからそれはねぇだろ」

「え~、そんな細かいところまで誰も見ないよ~」

「これぐらい見るし。てか、おめぇ説明書読まないで使い方わかんなくなって文句言うタイプだろ」

「え~、普通の人こそ説明書なんて読まないよ~」

「読むし。だからおめぇ読解力がどんどん風化してくんだよ」

「風化しないもん~。沙羅魅永久不滅読解力だもん~」

「おめぇはもんもんもんもんでやっぱ文句言うタイプじゃねぇかよ」

「ちがうもん、文句じゃないもん。ご意見だもん!」

「つまりクレームってことだろ」

「じゃあ、文句とは違うってことでしょ」

「はぁ? おめぇ文句言うやつのことなんて言う?」

「モンペ!」

「は? それは服だろ」

「え、なんで服? 誰が着てんの?」

「もんぺって言ったらせつ子だろ」

「え、どこのせつ子よ?」

「せつ子って言ったら火垂るの墓だろうがよ」

「あ~、それはちがうよ~」

「はぁ? 何が違うって言うんだよ」

「火垂るの墓のセツコは節足動物の節子だよ」

「はぁ、そこかよ。そこまで知るかよ」

「知っといてよ~。ホタルもハエもゴキブリも節足動物って公ちゃんが言ってたじゃん!」

「おめぇ食事中に汚ねぇ虫の話すんじゃねぇよ!」

「やだ~、虫の話で嫌がっちゃうなんて公ちゃん女々しい~」

「別に女々しくねぇし!」

「女々しくてつらいね~」

「辛くもねぇし!」


「で、何の話してたんだっけ?」

「それはこのソースが豆腐って話だろ」

「え、これ豆乳かと思ったら豆腐だったの!?」

「そうだよ。メニューに書いてあんだよ」

「へぇ、でもメニュー見なくても普通の人は気づくんじゃない?」

「おめぇ、読解力より記憶力のが風化してるんじゃね?」

「ちがうもん! 記憶力が風化したんじゃなくて劣化しただけだもん!」

「はいはい。わかりました」

「もう〜。あっ......」

「おい、ホタルイカをテーブルに落としてんじゃねぇよ」

「ちがうもん! 落としたんじゃなくてちょっとはじいちゃっただけだもん!」

「いやいや、明らかにはじいたんじゃなくてドロップしただろ」

「ちがうもん! ドロップちゃう! はじきだもん!」

「あ、それだ! 今火垂るの墓の話してたじゃん!」

「あっ、してたね! でも、なんでだっけ?」

「なんだっけか。パッとしない映画だから思い出せねぇな」

「あっ、火垂るの墓の『火垂る』が何で漢字なのかってやつじゃない?」

「そりゃ簡単だろ、あれだよ」

「あれって?」

「ホタルの墓って書くとヒカルの碁と紛らわしいから漢字にしたって話」

「なるほど〜! ホタルの墓とヒカルの碁って超似てるね!」

「だな」


「あっ、仰げば尊し」

「だな。そろそろ帰るか」

「うん。帰ろ〜」

「で、おめぇこの歌うたえんの?」

「うたえる〜。おおげばとおとし♪ 窓の雪♪ ふみ読む月日♪ かさはららら〜♪」

「そこ重ねつつだろ」

「あ〜、そこだけ忘れてたw」

「やれやれ」

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