第10話『悲しみレンズ』

三角定規で透かした空の

突き抜けた青さは

残酷なほどからっぽで


誰もいない公園で

のざらしになったブランコは

今日も静かに揺れるでしょう


赤いハサミは

伸びた前髪を切るためじゃなく

引き裂かれた制服は

どこにも行けないわたし


頬にタイルの冷たさと

指の隙間に屋上の風

厳格な祖母の尖った声と

暗い倉庫の錆びた匂い


生きている言い訳を

糸みたいにたぐりよせ

死んではいけない理由を

アルパカの濡れた瞳のように

雄弁に語れたら

自分の呼吸を見つけられただろうか?

夏の太陽も好きになれただろうか?


いまは、ただ

月と星の間に落ちてみたい

まっさらな命になって


世界が夜に目覚めないうちに

世界が夜に目覚めないうちに

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