第6話 魔女宅開拓期(3)
――ピピピピピピピッ――カチッ!――……
ああ、そう言えば今日の目覚ましは腕時計じゃなくて、昨日電気が使えるようになったから充電ついでにスマホに設定してたんだ。
あれ、でも、おかしいな?急に音が切れたような……。
「おはようございます。マスター」
すぐ近くから女性の声がする。 いったい誰だ?
薄目を開けて声のした方に目を向けると頭の上に誰かいる。
「……」
「……」
見るとミナが、俺の頭で両膝を付いて膝枕をしていた。
寝起きでまだ頭がボーッとしているけど、なぜこうなっているのか考える……が、まったく分からない!
昨日、寝る時には、ちゃんと枕を使って寝たはず!なぜ、ミナに膝枕されてる!?
「何をしてるの?」
「はい、膝枕をしてみました。気持ち良いですか?」
状況から見て膝枕は分かるが、俺の質問はそこじゃない!
「なんで俺は、ミナの膝で寝てるの?」
「はい、マスターが新しい枕に寝ずらそうしている。と仮定して膝枕をしてみました」
俺は問題なくぐっすりと眠っていたはず!とりあえずミナに注意するため体を起こす。
「って、あれ?何か体が動かない!?」
首から下が重くて起き上がることが出来ない。
いったい自分の体がどうなってるのか、首だけで周囲の状況を確認する。
「なんか布団の上に白くて艶やかな毛並みの物体が……」
俺の布団の上には、真白がスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
「なんだ……真白か……、あれ?でも、腕も動かないんだけど……」
なぜ腕が動かないのか今度は、布団の中を覗き込んで自分の腕に視線を移す。
見ると布団中から何かがニュキッと出て俺の腕を巻き付いていた。
巻き付いている物を何なのか確認するため布団の外へ何かを出してみると、それはアルフィーナが抱き枕と言わんばかりに俺の体に抱き付いて眠る姿だった。
「ちょっと!2人とも起きて!アルフィーナさん!真白もっ!」
2人の拘束から逃れるため、もがく様に布団の外に飛び出す。
「何じゃぁ……うるさいのう……」
アルフィーナが眠たそうに目を擦りながら体を起こす。
「アフゥ……ワァーーーフッ」
真白も大きな欠伸をしてから眠たそうな眼つきでこちらを見る。
「なんで、みんなで俺の事を取り囲んでるんですか!」
「ぬ?……そうじゃったのか?……どうも、布団と言う物が気持ち良かったのでなあ、ふあぁ……全く覚えておらんわ!」
「ワフッ!」
アルフィーナは布団のせいで覚えてないと言い真白もそうだ!といった感じだ。
何を言っても2人を諭すことは出来ないだろうな……。
「はぁーっ、……とりあえず俺は起きて朝の作業をします!」
盛大な溜息をして諦めて、さっさと今日の作業を始めるため着替えを持って部屋を出て洗面所に向かう。
真白も起き上がって後を追って部屋を出て行く。
「マサキの奴、何か怒っておったな……」
「アルフィーナ様は、もう少し慎みを持たれた方が、よろしいのではないのでしょうか?」
「お主に言われたくないぞ!」
アルフィーナは自分だけではないと抗議するが、変化が見ることが出来ないミナの表情にアルフィーナはミナへの抗議は無駄だと諦める。
「どれ、私も起きるとするか」
「はい、私は皆様の使った布団をたたんで仕舞います」
アルフィーナは着替えるため自室へ戻る。
ミナは全員の布団をたたみ押入れに収納すると、こちらも自室で着替えるために部屋を後にした。
マサキは洗面所で顔と歯を洗い着替えが終わると、いつも通り罠の確認に向かう。
今日の釣果は、湖の罠にナマズが一匹しかかかっていなかったのでゴムの樹液と一緒に無限収納に収納して家に戻る。
「ただいま~」
「お帰りなさいませ、マスター」
家に戻ると、ミナがテーブルに朝食を並べていた。
「早いなー、もう作ったんだ、並べるの手伝うよ!」
「はい、ありがとうございます」
ミナは丁寧に頭を下げて礼を言う。
「いいよお礼なんて、あたり前の事だから」
「私も手伝っておるのじゃ!まあ、盛り付けと運ぶしかしておらぬがな」
苦笑いを作ってアルフィーナが台所から出てきた。
手には料理を持っているので運ぶのを手伝っているようだ。
「すいません、俺も手伝います」
すぐに俺も料理を並べる手伝い始めると、あれやこれやと忙しくて台所が賑やかになる。
みんなで食事の用意をした方が、一人でするより楽しく感じられるな
見ると、離れた位置で真白は一人寂しくこちらを見ていた。
まあ、さすがに真白に料理の準備をさせる事は出来ないからな……。
あまりにも寂しそうに見えたので料理を運ぶ途中で真白の頭を優しく撫でる。
すると、真白は気にしないでとばかりに軽く頬を摺り寄せてきた。
料理が並べ終わると、それぞれの席に着く。
「それじゃあ、「「いただきます」」「ワフッ!」」
いただきます。の後にみんな待ってましたとばかりに食事を始める。
今日の献立は、ご飯に味噌汁、ウィンナー2本に目玉焼き、横に千切りキャベツのとマッシュポテト、小鉢にほうれん草のお浸しを入れ隅の方に漬物が添えられていた。
どこかの朝の定食みたいだ。
早速、きゅうりの漬物を一切れ取って口に入れる。
パリポリと良い音を鳴らせ口の中に塩気を感じるが……はて?風味がない。
「ああ!そっか、まだ浅漬けなんだ!」
「はい、
ミナの表情には出てないが、とても残念そうに答える。
そもそも漬物を食べて違和感を感じたのは、実家ではいつも糠漬けを食べていたからだ。
毎日の糠床の手入れは大変だと祖母は愚痴っていたが、とても良い味の漬物が出来るので糠の手入れを怠ることは無かった。
旨かったからな、あの漬物は!一人暮らしの時は、祖母に送ってもらって食べていたな……。
「ああ、気にしないで、糠漬けてのは熟成に数ヶ月は必要だからね、大丈夫これもおいしいよ!」
「ありがとうございます」
漬物をもう一切れ口に入れてご飯を食べると、次は他の料理にも箸を進める。
今日の朝食は全てミナが作ってくれたので味付けが完璧で食が進むと、あっと言う間に各自の皿が空になった。
「で?今日は何をするのじゃ?」
朝食も終わってお茶を飲んでると、アルフィーナが本日の作業について聞いてきた。
「そうですね~、ますは、
「おお、そう言っておったのう!」
まあ、本人達は気にもしないだろうけど……。
「次に家とかの周囲を壁で囲まないと」
「壁?なんじゃ、ここを砦にでもするのか?」
砦?……そうか、昔海外の国々では、高い壁を造って外敵の侵入を阻んでいたんだよな。
この世界でも壁は敵から自分らを守る物といった認識なんだな!
「いえ、壁の高さは、胸元ほどの高さしかないです」
「なんじゃ?それでは、容易に登れるではないか?!」
「ええ、それで大丈夫です。ここから私の家ですよという目印ですから!」
今日造ろうとしている壁は、人の侵入を拒む物ではなく認識させるために必要なものだ。
敷地を示す物なら壁だけではなく生垣などもあるけど、一応動物の侵入も妨げる関係で壁にする。
「争いで使うのではなく目印か……なるほどのう」
アルフィーナは深く頷いて納得している。
なんと言うか、この世界の人って結構殺伐としているのかな?
「あとは、鳥小屋の囲いを金属にするだけですね」
「なるほど、囲いを金属にすれば獣に襲われてもそうそう壊れぬからな」
アルフィーナの言うとおり獣避けってのもあるけど、他には劣化防止などもある。
「あの、マスター」
今まで黙っていたミナが、突然話しかけてきた。
「なんだい?」
「外壁の製作は、私がやりますのでお任せ下さい」
「いいの?」
「はい、問題ありません」
たしかに色々な情報を知っているミナなら時間も掛けずに問題なく造れるだろう。
「分かった。任せる」
「了解しました。それと、今後のために周囲の状況を把握しておきたいのですが、よろしいですか?」
ミナが提案する周囲の状況把握の意味するところはよく分かってる。
数日前に長い時間をかけて水を求めて森の中を彷徨っていたのだから当然といえば当然である。
「そうだね、そうしてくれると助かるよ!」
「はい、了解しました」
ミナは深々とお辞儀をして了解の意思を体で示す。
「私は、ミナの作業を見ているのじゃ」
「ええ、分かりました。じゃあ、ミナよろしく!」
「はい」
俺の場合、作業中にアルフィーナから質問があっても的確に答えるのは難しい。
ミナなら正確な情報による正しい答えを出せるので適任だろう。
ミナにアルフィーナの事を任せ早速作業をするため席を立つ。
祖霊舎作りの作業自体は、そんなに難しいわけではない。
前日と同じ様に木を魔法で成形してやると、すぐに祖霊舎を作り出す事ができた。
祖霊舎を自分の部屋に運び中に霊璽を納めてると、祖霊舎作りの作業は終了する。
次の鳥小屋の金網張りなので鳥小屋の建てた場所に向かう。
鳥小屋に到着すると中で元気良く鶏が飛び回っていた。
真白は後から付いて来るが、鳥達を刺激しないように気配を抑えているようだ。
「うん、今日も美味しい卵ありがとう!今日はお前達の家をリフォームしてやるからな……て分からないか」
返ってくるはずもないが、一言鳥に話しかけてから作業に入る。
と言っても、こちらも時間の掛かる作業ではない。
木の囲いを壊して金網を張るのではなく、まずは、無限収納からミナお手製のステンレス鋼を取り出して、魔法で金網状に成形し木の囲いの上から覆う。
次に木の囲いを魔法で変化させて少し太めの柱に成形すれば、ステンレスの金網を支える柱の完成だ。
なんと簡単!
「結構早く終わったな、どれ、ミナの手伝いでもするか………………は?」
まだまだ、お昼の準備には早いのでミナの手伝いをするため立ち上がって向かおうとすると、いつの間にか後ろに壁が出来ていた。
洞窟の時と同様に状況が理解できずに俺は呆然とする。
目の前には、漆喰で出来ているような白くて綺麗な壁が、瓦屋根付を付けて鳥小屋から10メートルほどの場所に立てられていた。
視線をずらして壁を追っていくと、家の周囲をグルッと一周している様に見える。
「えっ、もう出来たの?」
鳥小屋に来た時には、まだ森が広がっていたのに今は、綺麗に整地されて壁が取り囲んでいる。
「俺そんなに作業に集中していたのかな?」
一生懸命になっていたのは間違いないが、壁を作る作業に普通は気付くだろう。
「……まあいいや、とりあえずミナを探すか」
壁の事は直接本人に聞けば良いのでミナを探すため壁に沿って歩き出す。
「おいおい、これも造ったのかよ……」
家の玄関の近くまで壁を追って来ると、そこには見上げるほど大きな四脚門が造られていた。
「いや、確かに造ろうとは思ってたけど……早すぎでしょ!」
壁を造るなら門も造ろうと考えていたが、こんな僅かな時間に造られると、まるで魔法にでも掛かったかのようだ。
いや、魔法はあるんだが。
門を口を開けながら見ていると、門扉が開かれており外の様子が見てとれる。
外は広い範囲にわたって草木も綺麗に取り除かれ更に地面を硬化の魔法で固められていた。
どうやらミナは、壁作りと一緒に壁の外側も整地したようだ。
門をくぐって外に出ると、離れたところにミナとアルフィーナが見える。
「おーい!」
「これは、マスターお疲れ様です」
「……」
少し離れた位置からアルフィーナとミナに声を掛けると、ミナはお辞儀をして応えるがアルフィーナはボンヤリと空を眺めている。
「あれ?アルフィーナさん、どうしたんですか?」
何も応えず空ばかり見ているアルフィーナに再び声を掛ける。
「ん?おお、マサキか!」
やっと俺に気付いたアルフィーナは、少し興奮した面持ちでこちらに振り向く。
「何かあったんですか?」
「何かではない!いや凄い!凄いのじゃマサキ!お主の世界の物には、本当に色々と凄すぎて驚かされる。こんなに驚かされたのは百数十年ぶりじゃぞ!」
アルフィーナは、両手で俺の肩を掴んでグラグラ揺すり興奮した子供の様に話す。
「おっ、落ち着いて下さい!どうしたんですか!?」
アルフィーナをまるで馬をなだめる様にドウドウと両手で押し止めて落ち着かせるが、アルフィーナは肩から手を離してくれたが、まだ興奮さめやらない様子だ。
「馬鹿者!これが、落ち着いていられるか!アレを見ろ!」
右手で空の何かを指して見ろと言っているので指で差している方向に視線を移す。
「?」
アルフィーナの指差す方向に目を凝らして見ても青い空と、白い雲ばかりで他に何も見えない。
「ええい!分からぬ奴じゃな」
じれったいといった感じで少し怒るアルフィーナ、しかし、見えない物は見えないので仕方が無い。
「ミナ、アルフィーナさんは何の事言ってるの?」
「はいマスター、アルフィーナ様は恐らくアレの事を言っているんだと思います」
「アレ?」
ミナの言っている事も分からないアレってなんだ?
「今、戻します」
「戻す?」
やっぱり分からない。いったい何を戻すんだろう?
さっぱりと意味が分からないのでミナが、これから取る行動をしばらく様子を見る事にした。
「おお、戻って来たのじゃ!」
「?」
アルフィーナは何かに気付いたらしく興奮しながら叫ぶ。
俺の目には、いまだに何も入ってこない。
「ん!」
しばらくアルフィーナが指で差した空を見ていると、黒い点の様なものが見えた。
最初は小さい黒い点見たいな物が、だんだんと大きくなってこちらに向かってくるのが見える。
物体が大きくなりその全容が明らかになった時、ようやく俺はその物体が何か分かった。
「ミナあれって、もしかしてUAV?」
「はいマスター、あちらは小型ですがUAVで間違いありません」
「えーーーーーーーーーーっ!マジか!」
そう、その空にうつる物体は、UAV(無人航空機)のそれだった!
アルフィーナは再び興奮し俺は口を開けたまま呆然とする。
UAVが俺達の近くまで来ると、ゆっくりと降下して整地された地面に静に着陸する。
「えっと……ガソリンで動くんじゃないよねコレ」
UAVの着陸でようやく我に返ると、すぐにミナにUAVについて聞く。
「はい、昨日エネルギーロスのない伝導体が作れたので、ついでに電気放電の無い二次電池を作れたのでUAVに搭載しました」
「はあ?」
ついでにって、何言ってんのこの子?電気放電の無い二次電池なんてまだ作り出されていない物をさも簡単に作ったって?
「どうやって?」
「魔法を使って伝導体と同じ様に作りました」
わお!魔法は万能なんだな!
これは、はたして魔法が凄いのかミナが凄いのか、まあ間違いなく後者だろうね……。
「石油をまだ見つけていないので、ジェットエンジンではなくプロペラで飛ばしているので速度は出ません」
無表情ながら少し悔しそうに語る。
この子ならジェットエンジンでなくても音速を超えられる機体を作れるのではないだろうか?
「はあ……まあ、とりあえずいいや、それよりUAV使って何をやっていたの?」
そうUAVも十分凄いのだが、これを使っていったい何をやっていたのだろう。
「?朝に申告したと思いますが、周辺の状況を把握しておりました」
たしかに朝に周辺の状況を把握したいと言ってたけど……まさか、こんな方法で調査するなんて思ってもいなかった。
「えっ!でも、UAVでどうやって?」
「はい、無線を搭載しており電波を使って直接私の中にデータを送ってきます。また、操縦も私から電波を飛ばして行なっております。残念ながら電波の送受信なので若干のタイムラグが発生しますが、今のところは問題ありません」
まあ、本当にとんでもない事をサラリと言うな。
ミナの言っている事に色々とツッコミどころが満載だが、ミナが作ったのだからと妙に納得してしまう。
「なんというか、本当に凄いな」
「ありがとうございます」
褒めたと訳ではないのだけどミナは素直に礼を言って頭を下げる。
「上から見て何か分かったかい?」
「はい、ここより東におよそ100キロメートルの所に海が見えました」
「ほお、海か……魚、貝、お刺身、ひじき、海苔」
海があれば色々な魚や貝、それに海草と食生活がさらに豊かになる!
「しかし、海まで100キロかあ、1日じゃ着かないな……」
「そうですね。“このままだと”、徒歩で1日以上は掛かりますね」
「ぬ?お主達が訳の分からない言葉で話しておるから聞きそびれたのじゃが、海のことを話しているのか?」
眉間にしわを寄せて俺とミナの会話を聞いていたアルフィーナが話しに入ってくる。
アルフィーナが難しい顔をしているのは、たぶん俺たちがアルフィーナに分からない単語を使って話していたからだろう。
「アルフィーナさんは、知ってる……そうか!たしか船で魔界へ来たんでしたっけ?」
「うむ、海からこの陸深くまで来てようやく住まいを見つけたのじゃ!他の者は、途中の平原に集落を築いておったがな」
アルフィーナは懐かしむように魔界に着たばかりの話をする。
たしか漂流の末、やっとの漂着が魔界だったとか……漂着当初の陸での生活はさぞ大変だっただろう。
「なんで、海の周辺に住まなかったんですか?」
海から100キロは、そうとう内陸だ。
海辺とは言わないが、海の近くの川にでも住んでいれば生活は幾分楽になったのではないかと思う。
「うむ、集落を作った者達もここへ流れ着いた当初は、そう言っておった」
「何か問題が、有ったんですね」
問題が無ければアルフィーナの言っている通りに海辺に集落を作っているだろう。
そうじゃないという事は、何か問題が発生したという事……。
「うむ、海の近くには、下竜のたぐいが住み着いておっての、私以外には対処のしようが無かったのじゃ」
「下竜?」
この世界の生物は、前の世界の地球とは結構違っているのでアルフィーナの言う下竜が何なのか分からなかった。
「うむ、下竜とは、知能の高く魔力を操る聖獣とは違い、魔力や知能は少なく見た目が龍に近かったのでそう呼んでいるのじゃ」
「う~ん、ちょっと想像出来ませんね」
見た目が龍に近いと言われても地球では、龍なんていなかったのでファンタジーで出てくる龍、ドラゴンの事しか想像つかない。
「まあ、マサキは別の世界から来たのだから当然じゃの、最初に逢った時の真白ぐらいの大きさをしておる上に獰猛なのじゃ!見かけても容易に近寄るのではないぞ!」
「はあ」
「はあ、ではない!お主は真白の時もそうじゃが、警戒心が皆無じゃからの!」
「ああ、すいません。ええ、分かってますから」
そういえば、あの時アルフィーナに念を押されてたな……真白の時は恐さがなかったから問題ないと思えたんだけど。
そう言った危険な生物は、実際に目にしないとどの程度の危険があるのか判断できない。
以前、北海道へ旅行に言った時に檻の中にいるヒグマを見たけどアレはヤバイ!野生の獰猛さが体から溢れ出ている感じだ。
「あの、マスター、そろそろ11時過ぎになります。昼食の準備をした方がよろしいのではないでしょうか?」
「ああ、もうそんな時間か」
腕時計を見ると、11時をちょうど過ぎた所だ。
本当にミナは正確に時間を把握している。
「そうだね、じゃあ、戻って食事の準備をしよう!」
「はい、マスター」
「私も手伝うのじゃ!」
とりあえず海の話は、この辺にしておいて3人で昼食の準備に入る。
真白は朝と同じで手伝う事が出来ないので隅の方で待機してもらおう。
「ミナ、朝食のご飯は、あまっているか良い?」
「はい、冷めておりますが人数分あります」
「じゃあ、今日はチャーハンにしよう!」
12時も近いので今からご飯を炊いていたのでは、お昼にはとうてい間に合わない。
ここは炒めるだけのチャーハンに決める。
「マスター付け合せは、何に致しますか?」
「ん~チャーハンなら、餃子にでもしようか!」
本来はありえない事なのだそうだが、俺は別におにぎりとサンドイッチを両方食べても気にならないので問題ない。
「分かりました。スープは玉子スープに致しますね」
「オッケー!それじゃあ作ろうか!アルフィーナさんもお願いします」
「うむ、任せるのじゃ!」
アルフィーナが、聞きなれない料理に口を挟めないのは、おそらく今から作る料理の事だろうと当たりを付けているからだろう。
しかし、口元のよだれは何とかして欲しい。
台所に入って手を洗うと、まずは手間のかかる餃子からだ。
皮作りはミナとアルフィーナが作り始めているので、俺は中の餡を作る。
材料の量はミナが目分量で測ってくれた、これが凄く正確に測って出されるので材料を無駄にする心配はない。
「ほう、細かく刻んだ肉を包むのじゃな!なるほどのう」
みんなで餡を皮に包んでいると、アルフィーナが感心した様に言う。
アルフィーナの生まれた国では、いったいどんな料理が出てたんだろう?今度聞いてみるか。
「よし、包み終わったし、それじゃあ、餃子とチャーハンを炒めよう!」
「では、私は玉子スープを作ります」
俺は餃子とチャーハンを炒めに入ると、ミナは玉子スープの調理に取り掛かる。
チャーハンは、ミンチ肉と玉子、それにピーマンとニンジンと、ネギを刻んだ物を入れてご飯がパラパラに為る様に炒める。
犬にネギはダメだと聞くが、真白は聖獣だから問題ない。
「ほう、包んだ物を鉄鍋に油を引いて焼くのじゃな……」
「ええ、この平べったいのは、フライパンって言います。本当は煮るそうなんですが、私の国では、このように焼く事が多いですね」
本場は水餃子らしいけど日本では焼き餃子が主流かな
「ほう、煮るのかえ」
「はい、今度機会があれば作りますね」
「うむ、頼むのじゃ」
まあこれは、アルフィーナの口に餃子が合えばの話だけどね。
「よし、餃子とチャーハン完成!ミナそっちは?」
「はい、問題ありません。玉子スープは完璧です」
アルフィーナと話しながらも餃子とチャーハンを炒め終わったのでミナに声をかけると、ミナの方の玉子スープも終わったのようで自身に満ちた声で応えた。
各料理をテーブルに並べてみんなでいただきますをして食事を始める。
「ふぉ!このチャーハンと言ったかのう、ゴハンやオカユとは違うが美味しいのう!ギョウザもパリッとして中から汁が出てきて旨いのじゃ!」
どうやらチャーハンと餃子もアルフィーナの口に合ったみたいだ……というかこの人、嫌いな食べ物ないんじゃないのか?
ミナの作った玉子スープを一口飲んでみる。
「おお!」
ただのコンソメを使っただけなのに絶妙な味付けがなされていて、本人が完璧と言ったのも頷ける。
全員料理を残すことなく食べ終えると、食後のお茶の時間に午後の予定を考える。
「さて、午後は何をしますかね」
「あの、マスター」
ミナが手を挙げる。
何か提案があるのかな?
「何かあるのかい?ミナ」
「はい、マスターの無限収納に納められた魔鉱石をどうにかした方が、よろしいのではないのでしょうか?」
魔鉱石とは、アルフィーナに教えてもらった魔道具で使われる物の事だ。
昨日、トンネルを掘った際に金属鉱石の採掘量を超えるほどに大量の魔鉱石が採掘されていた。
ただ、今現在、利用方法が分からないので無限収納の中に収納したままになっている。
「魔鉱石を?!」
「はい、アルフィーナ様がおっしゃるには、この世界では電気よりも魔法や魔石を利用する事が多いそうです」
「そうなのじゃ!マサキにも言ったが、魔法は広く利用されておる。デンキとは違うが色々と便利に使える物じゃ、何かの力にはなるじゃろう!」
たしかに魔法は便利だし実際にミナが、魔法を使って地球で電気を使って作動させる物を作ってくれた。(ただし、現在の地球では、いまだ実現されていない物もある)
何かに利用できれば生活の幅も違ってくるな……。
「たしかにね……よし、午後は魔鉱石について色々と実験してみようか!」
「了解しました」
「魔道具の知識はあまり多くはないが、私も手伝うのじゃ!」
アルフィーナとミナに頷いて応える。
よし、午後は魔道具作りだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます