異世界転送物語 ~もう一つの世界へ~ みんな笑顔でいます!

みずねこ

第1話 はじまり、

~周囲は海に囲まれた大陸、そこには多くの獣と人間の姿とは異なる異形の種族が生息し、怪物達が跋扈ばっこする。人は恐れ忌み嫌い、そこを“魔界”と呼んだ。~


 人の気配が無い鬱蒼うっそうとした原生林と藪の中を手で分けながら素鵞真幸そが まさきは必死になって前に進んでいた。

 こんな森の中なのに正樹は、左手にスーツの入ったハンガーケースと大きな鞄を握りジャケットを小脇に抱え、右手には大型のキャリアケースと、その上にボストンバック乗せ引きずっている。

 森の中を歩くには場違いな格好で、汗だくになりながら前へ前へと進んでいた。


 体が疲労により悲鳴を上げ、喉がかわきを訴えはじめた頃に、樹齢数千年と思える大樹の下に藪が無い空間があったので真幸は倒れるように座りこむ。

 荒れた息を整えながら鞄を開け中に入っている500ミリリットル入りのペットボトルに口を付け大事そうに一口一口飲んでいく。

 息も落ち着き、未だ混乱する頭で現在の状況を整理しようとするが、


 「はあ、はあ、はあ、……なんで俺は、こんな所に俺は居るんだ?」


 疲労から来るのか真幸は、疲れた表情で一人愚痴る。

 真幸は、急に慌しくなった一週間前の出来事を思い出していた。


 一週間前に唯一の肉親である田舎の祖母が倒れたと言う電話を祖母の家の隣に住んでいた老夫婦からもらった。


  俺の母親は3歳のときに勤め先から車で帰る途中で対向車線を大きくはみ出して来たトラックと衝突、そのまま崖へトラックと一緒に転落し死んでしまったらしい。

 母は俺が生まれて直ぐに祖父母の家へ戻っており結婚はしていなかった。また、兄弟もいないため俺は、そのまま祖父母に引き取られることになった。

 祖父母の家は都市部から離れた農業を主産業にしている村に在った。村はスーパーが1件のみコンビニなんて無く、駅前にある商店街以外には少し離れた場所に個人商店が数件在るくらいで後は何も無い農村だった。

 俺は祖父母に養われながら順調に育ち地元の工業高校(自転車で1時間)無事を卒業した。

 工高卒業後は祖父母に面倒を掛けないため、少しでも楽をしてもらいたい、といった思いから地元で就職しようと祖父母に相談すると


 「大学ぐらい出とかんと、学は一人前にならん!そのぐらい何とかなる貯えはあるから大学へ行け!」


 祖父から街の大学に行く様に強く進められ、街の大学を受験し無事合格すると祖母から


 「あんた一人が街で暮らさせるのは心配だし、雑賀さいがさん(地元神社の神主を勤めているお爺さん)とこの息子さんが街に家を建てて大学で先生やってるの知ってるでしょ?部屋貸してくれるって言ってくれてるから、あんたソコからからの大学通いなさい。」


 決定事項を通知された、ちなみに雑賀さんの息子さんは合格した大学の文化人類学の教授をしていた。


 大学を4年で無事卒業し、そのまま街にある工業関係の企業に人材を派遣する会社へ就職、雑賀教授の家を出てアパートで一人暮らしをしながら働くことにした。

 数年が過ぎた俺の年齢も40歳も過ぎた頃に祖父が倒れそのまま亡くなった。祖父母ともに背中に針金でも入っているのでは無いのか?と思えるぐらい背筋はピンと伸び、年齢を感じさせない位に喋り方もはっきりとし頭の回転も早かった。

 しかし、年齢もかなり高齢になっていたので心配していた矢先の不幸に悲しみとともに一人残った祖母のために村へ戻って再就職しようと決めて祖母に相談すると


 「あんたね、こんな村に戻ってきても満足に就職なんて出来ないんだから、そんな事より結婚はまだかい?」


 自分の事は自分でするから、早く結婚しろと言ってくる祖母に


 「彼女もいないのにどうしろと?」


 苦笑いしながら答えた。確かに俺の子供を見せるのが、一番の孝行になるかもしれないと考えなくもなかった。


 そんなやり取りをした1年後に今度は祖母が倒れたのだ、急な知らせに慌てながらも勤め先の会社へ連絡し休暇を取り、私服や着替え等をキャリアケースに入れ非常時用に色々と詰め込んである鞄にスーツ(考えたくは無かったがいざと言う時のため)と現在仕事で使っているノートパソコンを抱えるように持ちながら急いで祖母の家がある村へ電車で向かった。(ちなみに非常時用の鞄は、震災の時、ちょうど俺は1週間の出張中に震災にあい酷い目にあったので、長期間家を空ける時は、必ず持っていくことにしていた)


 祖母が倒れた原因は脳卒中であった。村の病院では手の施しようが無く、遠く離れた脳外科専門の病院へ運ばれた、祖母が倒れて発見される時間が掛かかったことも合わさり病院に到着したときは手の施しようが無く直ぐに息を引き取った。

 俺は電車の中で祖母の死を知り、祖母の死に目に立ち会え無かった事、自分にも色々出来たのでは?といった悔しさ、それと唯一の肉親を亡くした悲しみが入り混じり心の中で葛藤していた。


 病院から遺体を家の方に移し葬儀の準備に入ろうとすると、ほとんどの段取りや各所への手配は区長さんと近所の爺さん方が対応してくれていた。

 遺産相続など色々手続きが大変だなと思っていると、祖父母が懇意にしていた近所の爺さん司法書士が遺産の整理は、ほとんど済んでいる事を告げてきた。

 祖母も虫の知らせでもあったのか、遺品も整理されていた後は俺の承諾のみだけと、あの人らしいなと笑いにも似た感情が込み上げて、不思議と悲しみが収まっていった。


  瞬く間に6日が過ぎ、電気・ガス・水道の使用停止の手続きを電話で行い、明日は役所で手続きを残すのみとなっていた。

 掃除やゴミの処理等の作業すでに終わっており、思い出のいっぱい詰ったこの田舎の大きな家で過ごすのは今晩で終わりとなる。

 祖母は亡くなった後にこの家を取り壊し、土地も売却することを決めていた。

 司法書士の爺さんに渡された遺言には色々と書かれていたが最後に、こんなススけた家を渡すより、あなたが新しく家を建て家族を養いなさい!と書かれていたのには、苦笑いするしかない。


 夜もふけり、しんみりとする中、気分転換に


 「どれっ久しぶりに仕事でもするか!」


 気合を入れノートパソコンの電源を入れた。(終わっていない仕事は、ノートパソコンにデータを入れ暇な時に進めていた)


 ファンが回りハードディスクから読み込む音が聞こえてくる。


 「……」

 「……、ん!?」

 「………………、あれ?」


 いつもは直ぐにBIOSの画面が出るのにそれすら出ない。何度も電源を入れてみるが状況は変わらなかった。


 「あぁぁぁー、マザボかモニターケーブルがいったかぁぁー」


 このパソコンを購入してから8年、大きいが使いやすさと性能で選んだノートパソコンがこの度亡くなられました。


 「つきましてはご遺族に連絡を…ってやってる場合じゃなくどうしよう?明日電気屋に行ってみるしかないかぁ」


 田舎の電気屋は電化製品の搬入や取り付けは出来てもパソコンは取り扱わない、それに俺の記憶が正しければ明日行こうとしてる電気屋は、おじさん、いやお爺さんといっても言い年齢なのだ。

 当たり前だが自営業なのでよっぽど年を取らなければ何時までも現役で働いていられる。


 「詳しい人は詳しいから、見た目とかで判断できないんだよね」


 意外とパソコンも大丈夫かもしれない、僅かな希望を頼りに明日手続きが終わった後に電気屋に行く事を決意する。


 「まあ最終的には、この機会に買い替えても良いな」


 判断は明日にして早めに寝る事にする。


  11月2日の朝、押し寄せて来た寒波によって、秋が来ずに冬が先に来てしまったのか、と思えるほどの底冷えの寒さの中、今日の俺は、ジーパンと灰色のワイシャツ、ロング丈でカーキ色のジャケット(防水暴風使用)を上から羽織ってブーツを履くと言った暖かめの格好をして家を出る。

 まずは、隣に住んでいる老夫婦に各手続きを済ませアパートに帰ることを告げ、別れの挨拶するために隣に向かい足を進める。


  祖父母と仲のよかった老夫婦には、俺も子供の頃から面倒を見てもらっていた。

 老夫婦に帰ることを言うと、アレも持って行けコレも持って行けと、色々と持たされることになった。

 俺もアパートで自炊はするが、独り身の者にこの量はどうなのか?と思わなくなかったが、好意で送られたものなので断れなかった。

 いや正確には、断っても持たされただろう。

 とりあえず保存が利く食品や調味料と籾殻付きの米はありがたかった、それとなぜか籾殻付き餅米も持たされた、まあ赤飯にでもしよう。

 さらにお歳暮で貰って使ってない石鹸や洗剤、タオル等を貰う事となった。

 さすがに量が量だけに持ちきれないため、学生時代に使っていたバック(大容量)に詰め込みキャリアケースの上に括り付ける。

 宅配も考えたが、数時間の電車に乗ればアパートに帰れるのだから大して苦労しないだろうと考え持っていくことにした。

 葬式等で迷惑をかけたご近所にも別れの挨拶に行ったが、挨拶するだけでバックはパンパンに膨らんでいった。


 「すごい事になったな~、どうしよう……」


 バックかなりの重量になり、やはり宅配にするべきか悩んだが、キャリアケースの車輪が普通の物よりかなり大きいためか、大量の荷物を乗せても段差をものともせずスイスイ引けることに安堵しこのまま帰ることにする。


  挨拶も終わり家の前に戻ると、老夫婦がタクシーを呼んでくれていた。

 これならそこまで荷物を意識することも無いと安心し、老夫婦に礼を言ってタクシーに荷物を載せる。

 タクシー代まで出そうとする老夫婦に


 「大丈夫です自分で払えますから、今度時間が空いたら遊びに来ます。本当に色々とありがとうございました」


 やんわりと断りを入れ別れの挨拶を交わしタクシーへと乗り込む。

 タクシーの外で別れを惜しむように老夫婦が手を振ってくれたので、俺もタクシーの中から振り返しているとタクシーがゆっくりと出発する。

 どんどん老夫婦と幼い頃から過ごしてきた家が遠ざかって行くのを見ていると、なんだか切ない気持ちがこみ上げてくる。


  役所で各種手続きを終えると、駅前の商店街へ向かった。パソコンを商店街の中にある電気屋へ持って行くためである。


 商店街の前で止まってもらいタクシーの運転手に代金を支払ったあとにタクシーを降りると、目も前に懐かしい光景が広がっていた。


 大学へ入学するまでいつもお世話になっていた商店街、今思えばありとあらゆる物をここで買い揃えていた。あまり買わなかったが、ゲームやマンガもここで買って友達と遊んでいたのを思い出す。

 商店街の入口に入ると懐かしさとともに多くのお店のシャッターが閉まっていた。

 ゲームを買ったおもちゃ屋も文房具を買っていた文具店も閉まっていることに一抹の寂しさを覚える。


 ゆっくりとした足取りで商店街に入り1件1件お店を見ていく、電気屋は奥の方にあるので久しぶりの商店街を満喫する事にした。

 色々な店を冷やかしていたが、この商店街の店はそれほど多く無いので、いつの間にか電気屋まであと少しのところまで来ていた。

 何にも考えないで店や並ぶ商品を眺めながら歩いていると、一瞬、目の隅にパソコンの文字が目に入る。

 ほんの一瞬の事なので、そのまま電気屋に向かおうとする。


 「えっ、パソコン!」


 俺はパソコンの文字を思い出し、もう一度周囲を確認する。

 雑貨店の右脇にある地下への階段の前にマーカースタンドが置いてあり、


 <デスクトップ、ノートパソコン、周辺機器販売中!激安品・訳有り・各種あります!修理も承り♪ぜひぜひ寄って行って下さい! パソコン専門店 デアデュコ>


 と可愛い文字が手書きで書かれていた。


 「おお~、修理までしてくれるなら入ってみるか。まあ、すぐに修理できなければ、新しいパソコンも置いてあるかも知れない」


 思わぬ発見で電気屋へ行かずに足を地下への階段へと向ける。

 エレベーターが無い様なので荷物を抱えて階段を下りていく、これだけ荷物があるとたかだか階段を降りるだけでも一苦労だ。

 だいたい1階分の階段を下りると2、3mの通路になっており、その先に扉があり、その扉の上で蛍光灯が1本灯り辺りを明るく照らしている。

 もしこの蛍光灯が無ければ、通路は結構薄暗くて足元も見づらく感じただろう。

 扉の前まで来ると扉に <パソコン専門店 デアデュコ> の文字、そして、文字の下にOPENの看板が掛かっていた。

 パソコンショップか、何時頃出来たんだろう?こんな地下に店があるけど前は飲み屋関係だったのかな?と、そんなことを考えながら扉を開ける。

 扉に付けられたベルが軽快に鳴り店内に客の来店を告げる。


 「いらっしゃいませ~♪」


 近くから女性の声が聞こえた。

 声がした方を向くと、入って左手の1mぐらい奥にレジカウンターがあり、そのレジのすぐ脇に女性が立って、俺にお辞儀しながら挨拶してきた。

 来店の挨拶を終え女性が顔を上げ俺と目が合う。

 女性と目が合った瞬間、その美しさに俺は体が動かなくなってしまう。


 女性は顔が小さく目は少し垂れ目、柳の葉のように細くてきれいな眉と合わさると、とても落ち着いた雰囲気をかもし出しピンク色の潤った唇が優しく微笑んでいた。

 長い髪を後ろで結ってまとめており、前髪は前で軽く分けられ目元の辺りに落ちている。

 服装は、ピンクのチェック柄半そでワイシャツにグレーのベスト、その上に黒のエプロンを身に着けている。

 しかし、豊かな胸はエプロンしでもその大きさを強く主張していた。

 身長は165cmぐらいで細すぎず太すぎず、出るところはしっかり出て締まるところは締まっている体もまた魅力的だ。


 「あの、どうかしましたか?」


 あまりにも長く見詰めていたせいか、それとも大量の荷物を持って入ってきたせいか、顔は笑顔のままで、首を斜めに傾け疑問を投げかけられた。


 「あっ、いやっ、ぱっパソコンを見て欲しいんですが」


 若干声が上擦り、顔を赤らめながら本来の来店目的を答える。

 良い歳して情けなくなるが、これだけの美人を目の前にするのは久しぶりなので仕方が無い。


 「修理ですか?ご持参いただいていますか?」

 「あっ、はい、こっこれです。」


 未だドギマギしながら鞄の中に入っているノートパソコンを取り出す。


 「こちらですか。では、隣のテーブルへどうぞ♪そちらの椅子へお掛けください。」


 案内されたテーブルに向かい合って座り、ノートパソコンをテーブルの上に置く


 「どういった症状でしょうか?」

 「えっと、電源を入れても画面が真っ暗のままで、BIOSの画面も出ないんです。」

 「そうですかー、原因はモニターか、マザーボードにあるかも知れませんねぇ。お時間が有れば見てみたいのですが、よろしいでしょうか?」

 「あっ、はい大丈夫です。よろしくお願いします。」


 一つ一つの仕草がとても可愛い店員さんにテレながら、俺は頭を下げお願いする。


 店員さんがパソコンと見ている間、俺は店内をぶらつくことにする。

 このまま店員さんの顔を眺めているのも良いが、さすがに作業の邪魔だろうと思い席を離れる。

 店内に客は俺一人、平日の昼で、しかも寂れた商店街の地下にある店だから集客率が悪いのだろう。

 店員さんの方を見ると、一人で店のパソコンに、俺のノートパソコンをケーブルで繋いで何かやっている。

 何もする事がないので、とりあえず俺は店内の商品を眺めたり、店に備え付けの情報誌などを読んで時間をつぶす事にした。


 「お客様~、よろしいですか?」


 小一時間ほどたったところで、店員さんに呼ばれ席に戻る。


 「どんな感じですか?」

 「そうですね~、モニターの方は特に問題は無さそうです。ハードディスクも問題ないようなので、やはりマザーボードに問題があるかも知れませんね」

 「あー、やっぱりソコですかー」

 「修理となると、メーカーのノートパソコンなので、メーカーの修理工場での修理か、部品を取り寄せての修理となりますが……お客様のノートパソコンは年式も古く修復できるかどうかは、メーカーに聞いてみないことには……また費用の方もかなり掛かるかと」


 まゆを寄せ申し訳無さそうにする店員さん。


 「ああ良いですよそのままで。新しいパソコンを買ったほうが早そうですしデータさえ取り出せれば問題ないので、何かオススメのパソコンありますか?」


 修理が難しければ新しい物を買うつもりだったので問題は無い


 「そうなんですか!?そ~ですね。ご予算はどのぐらいですか?」


 あっさりと買い替えを伝える俺に店員さんは明るい表情になり笑顔で答えてきた。

 この笑顔なら予算は青天井で出せる。


 「そうですね~、20万円までなら出せます。」

 「でしたら、こちらのパソコンなど如何でしょうか?当店独自ブランドですが、表計算ソフト、世界辞典せかいじてんなどソフトが充実していますし、ウィルス対策やセキュリティもしっかりしてます。価格も税込み17万円となっております。」


 店員さんが、今まで使ってきたノートパソコンを二回りほど小さくし、更に薄いノートパソコンを取り出しその機能を楽しげに説明してくる。

 もうこの笑顔されたら俺の中で、このパソコンを購入することが決定された。


 「スペックはどのぐらいなんですか?今まで使っていたパソコンと比べると?」

 「そうですねー、お客様のパソコンと比べると遥かに上のスペックとなります」

 「えぇ!そんなにですか!?当時でもそれなりのスペックのパソコンですが、そんなに違うんですか?」


 その性能差に驚く、遥か上ってどんなスペックなんだ?しかも20万円以下で買えると言われ驚きを隠せない。


 「ええ最新ですから~♪」


 自慢げに胸を張る店員さん、すでに強調された胸が更に強調される。

 うん、ますます良い、もうエプロンからこぼれ落ちそうなくらい、そうなったら直ぐに俺が支えなければ!


 「ブラしてますし、そんな事起きませんよ?」


 何故バレた!?


 「うぇっ!いっイヤ、はは……ばっ、バッテリーはどのぐらい持ちますか?」


 見透かされた事が恥ずかしく、無理やり別の話題をふる。


 「最新のバッテリーを搭載してますし、電力消費も抑えられています。それに太陽光発電と微熱発電びねつはつでんなどにより半永久的に持ちます!充電知らずですよ~♪」

 「えぇーー!?そんなに!」


 また驚く、半永久と言われ、もう凄すぎて頭が追い付かない。


 「最新ですから~♪さらに、このパソコンは、とても頑丈に設計されています。細かいホコリや熱、超新星爆発程度ちょうしんせいばくはつていどでは、傷一つ付きませんよ~♪」

 「ハハハ、またまた~」


 軽い冗談も飛ばせる店員さんマジ女神!可愛すぎる!!


 「最新ですから~♪今なら“あるゲーム”を入れていただけると、このパソコンと無線接続で情報やソフトウェアを共有できる小型端末とアクセサリーをプレゼント♪」

 「へー、ゲームを入れるだけですか、登録とかしなくても良いんですか?」


 メールアドレスや個人情報の登録で無料プレイは携帯アプリやネットゲームで知っている。

 まあそういったのは、アイテム課金とか、アイテムガチャで金銭収入を得て成り立ってるんだけど

 ちなみに祖父母に育てられた俺だが、祖父母ともやる事(勉強と体を動かす事)さえやっていればゲームやマンガ、アニメは気にしなかったので、小さい頃からそれなりに遊んでいた。さすがにのめり込むほどでは無かったが……


 「あっ、説明が不足していました申し訳ございません、初期登録だけは当店で登録させて頂くことになっています。登録の際は、ご本人のお名前とメールアドレスを登録して頂くことになります。あとキャラクターメイクは、当店のパソコンで設定します。簡単な質問をしますので、難しく考えずに軽くお答えて頂ければ問題ありません。」


 へ~最近のゲームは、キャラメイクを店側がするのか……。まあ、そんなゲームも有りかな?キャラを被らない様にする配慮なのかな?最近ゲームを購入してないのでこの辺のゲーム事情にはうとかった。


 「あ~、そうなんですか。でも、登録されたゲームを遊ばないかもしれませんよ?」

 「そちらは問題ありません。オプション程度に考えていただければ結構です」


 なるほど広告?宣伝?のお金が入ってくるから色々な特典を付けられるわけか。


 「そうですか~。分かりましたお願いします。」

 「ハーイ♪それでは、こちらのパソコンを起動してパソコンの初期登録を致しますね」


 眩しい笑顔をこちらに向けてくる店員さんに、俺はすぐに快諾した。

 店員さんは、俺の向かいで新しいパソコンを開くと一瞬で、店員さんの目や顔に光が射し明るくなった。


 「えっ?起動したんですか?最初から起動していた訳では無いんですか??」

 「いいえ♪今起動させました。最新ですから早いんですよ♪」


 まったく気が付かなかった。ノートパソコンを開けた瞬間に起動するとは驚きの早さ!しかも、起動音が全く聞こえなかった。

 唖然としている俺をよそに、店員さんが俺の方にノートパソコンと板状の機材を向けてきた。


 「では、パソコンのセキュリティを登録いたします。こちらの板の上に手のひらを載せて、こちらのパソコンに向かって、ご自分のお名前を名乗りください。そうしますと、声紋情報と生体情報が登録されます。」

 「えっ!生体認証なんですか!?」

 「はい♪セキュリティは大切ですから!盗難や紛失した場合にデータの漏洩などあると大変ですから」


 確かに会社でもシステム管理の人が、パスワードは定期的に変えてくださいとか、記憶媒体の管理は厳重にして下さいって、口がすっぱくなるくらい言われたな、最近じゃ当たり前のことなんだな


 「分かりました。じゃ、じゃあ、素鵞真幸……これでいいですか?」


 マイクはどこにあるんだろう?とりあえずノートパソコンに向かって自分の名前を名乗ってみる。


 「生体情報が登録されました。末永く、よろしくお願いします。マイマスター」


 板にてのひらを載せ自分の名前を名乗ると、すぐにパソコンから女性の声が発せられた。


 「っへ?」


 俺から間の抜けた声が漏れる。

 どこから声がしたんだろう?と、あたりを探ると見ると、目の前のパソコンの画面に銀髪で美しい女性が、お辞儀をしながら挨拶している。


 「あっ、そうでした♪こちらのパソコンには、AIみたいな物が組み込まれているので、質問や認証は声にするだけでこの子が処理します。また、声が気に食わなければ男性の声、幼い女の子の声など色々とお好みで変えられますが、どうされますか?」

 「いえいえいえっ、このままで大丈夫です。いや~凄いですね、こんな機能まで入っているなんて」


 驚きに継ぐ驚き高性能すぎるだろう!本当に17万円なのか?あとで追加の料金とか発生しないよな?大丈夫代よな?心配になってきたぞ。


 「追加料金はないですよ♪当社独自のシステムなのでお値段も抑えられているんですよ!不具合があっても普通にキーで入力も出来ますから安心です。」


 見透かしたように、いや筒抜けかな……まあいっか、なるほど自社システムを導入することで料金は抑えられてる訳か


 「それではゲームの初期登録を致しましょうか♪」


 店員さんが初期登録の準備を始めると


 「失礼ながら、私も登録作業を行えますが?」


 ノートパソコンから、先ほど認証時に発せられた女性の声がする。


 「いいえ、この作業は私の仕事ですから!」

 「了解しました」

 「ははは、ナチュラルにパソコンと話さないで下さよ~」


 店員さんが普通にパソコンと会話しているのに、驚きすぎてもう笑うしか出ない。


 「うふふ、最近のパソコンは優秀なので、このぐらい朝飯前ですよ♪」

 「そうですよ、マイマスター、私は自立知能を搭載しているので凄いんです。」

 「えっ!そうなの?俺が時代に後れてるの…か??」


 俺の部屋にはテレビがないので毎日の日課としてニュースサイトを見てるけど流石に最新のAI情報まで知識は至らなかった。

 まあ、最近では音声入力が当たり前だし、声で動かしたり話したりするゲームもあったので無くはないか……。


 「はー、すごいですねー、でもそんなAI積んでるのに金額間違ってませんか?」

 「先ほども言いましたが、当社独自のシステムなので、この子もシステムの一部ですから問題ないですよ♪」

 「はあ、分かりました」


 店員さんも問題ないって言っているしまあ良いか!と考えても仕方が無いので、俺は思考を何処かに放り投げる事にした。


 「それでは、ゲームへの初期登録しますね♪まずはこちらにお名前とメールアドレスを入力し、利用規約に同意出来れば“同意する”の所をクリックして下さい」


 店員さんはノートパソコンをこちらに向け画面の入力場所を指差し説明してくれる。

 画面には上の方に“異世界転送物語 もう一つの世界へ”どっかで聞いた様なタイトルの文字が映し出されている。

 タイトルの下に“お名前”“メールアドレス”の文字が2つ並んでいて横には四角い空欄となっていて名前とメールアドレスを入力するようになっている。

 下の方に“利用規約”文字が書かれた四角いアイコンを押すと別枠に利用規約のページが現れた。

 利用規約のアイコンの下に“同意する”“同意しない”の2つのアイコンがある。


 「はい、ここですね」


 手早く名前とメールアドレスを入力し、利用規約を流し読みする。

 本来だとしっかりと読んで納得する内容であれば同意をするんだろうけど、まあ利用規約は文章量が多いので読むのは大変でもあるし、法律に則っている文字があれば問題ないだろう。

 利用規約を閉じ、“同意する”をクリックする。


 「はい、ありがとうございます♪それでは質問の方に移らせていただきます。」


 店員さんは、クルッとパソコンの向きを変え、ゲームの登録のための質問をする旨を告げてきた。


 「プレイするキャラクターの年齢は何歳ぐらいがよろしいですか?」

 「え?あっいきなり年齢なんですか?容姿とかではなく」

 「はい、容姿はすでに決まっておりますので、年齢からになります」


 まあ、容姿についてはゲーム会社側が決めるのかな?もしくはランダムか…まあいいか気にしても仕方がないか、プレイするかもまだ分からないし。


 「そうなんですか~、ええとじゃあですね…20歳ぐらいでお願いします。なんか若すぎても年寄りすぎても嫌なんで」

 「はい♪20歳ですね~、そうですね、幼すぎると威厳がありませんし、お年寄りだと周りが気を使ってしまいますからね~♪」

 「ええ、そうなんですよ、だいたいその年齢だと感情移入しやすくて」


 感情移入出来ないゲームはあまりプレイしたいと思わない。

 幼いと違和感があるし、中年でも自分を見ているようで悲観してしまう。

 遊ぶのであればこのぐらいの年齢がちょうど良い。


 「あっ、あと加齢は導入しますか?」

 「へ~そういったのもあるんですか!?ん~そうですね……導入しないでお願いします」


 むかし遊んだゲームで、年齢がある一定を超えると、筋力や素早さなどの能力がレベルアップ時に下がるといったものがあったため、キャラクター作成時は年齢を幼くする必要があった。

 お爺ちゃんで若者と一緒の成長なんて可笑しいからね。


 「はい♪次はアイテム収納なんですが、有限か無限を選べます」

 「有限か無限かですか??」

 「はい♪有限の場合は持っているバックに入るだけとか、手にもてるだけ、ポケットに入るだけなど、容積内に入るものとなります。胸のポケットにロングソードは入らない、といった感じです。無限は無限収納でして、簡単に言いますと別の空間に目録をつけて入れる感じです。ただし無限収納内には生物は入れられません、人や生物を入れられても困りますから~、あっでもタネとか植物は入るようなので、心臓が動いているとかが条件なんでしょうか?申し訳ございませんが、細かい内容は私にもわかりかねます」

 「なるほど、有限は縛りプレイになり、無限は緩くプレイできるんですね。まあ、縛りプレイはやらないので無限でお願いします」

 「はい♪では、次は自分のタイプなんですけど」

 「タイプ?」

 「はい、剣や槍などの武器を使ってズバズバっと敵を倒していく武器使いタイプか、魔法で色々出来る魔法使いタイプの二つがあります♪」

 「へ?二つだけですか?」

 「はい♪二つだけです」


 まあ、銃や弓は武器使いタイプになるし、僧侶は魔法使いって言えばそうだしな……あれ?武闘家やモンクは?まあ、アレも手に武器を付けたり、棍や扇を使うのなら武器使いと言えば武器使いか……


 「武器も魔法も使えるタイプはないんですか?」

 「魔法使いが武器を使うのに問題は無いんですが、武器使いには遠く及びません。逆もまた然りです。出来なくもないけど突出した強さにはならないんですよ~」


 すこし眉を寄せて答える店員さん、まあシステムとして、そうなっているのであれば仕方がない


 「じゃあ魔法使いでお願いします」


 最初から魔法使えると便利そうだし


 「はい♪魔法使いですね~、それでは魔法使いの魔法量を決めます。こちらにあるアイコンを押すと横にある数値がランダムで表示されます。もう一度アイコンをクリックすることで数値が止まり、魔力量が決定されます。」

 「え?魔法量ですか?体力や筋力、俊敏とか無いんですか?」

 「はい♪魔法量だけですね。持久力や筋力は、運動するなど鍛えると付くようになっています。」

 「へー、そういった所はリアルに作っているんですね……ちなみに武器使いタイプだと何が上がるんですか?」

 「武器使いタイプですと技量ですね♪簡単に言うとセンスです」

 「なるほど、確かに使用する武器の扱い方が分かっているか、いないかで切れ味やダメージが変わりますからね」

 「武器使いに変更しますか?一度能力値を決めてしまいますとタイプの変更は出来ませんが、今ですと変えられますが?」

 「えっ、一度能力値を決めてしまうと変更不可なんですか?」

 「はい、そういった仕様になってますので」


 またまた眉を寄せる店員さん、まあ良い能力値になるまで、何回も振り直すことが出来るゲームもあれば、ダメなゲームもあるからな


 「いえ、そのままで大丈夫です。このアイコンで自分のキャラクターの魔法量が決まるんですね?」

 「はい、魔法量が決まります。決まってしまったら変更は不可能ですが、よろしいですか?」

 「はい、大丈夫です!じゃあ、いきます!」


 すこしドキドキしながらアイコンを押す、すると目まぐるしい勢いで数値が変わっていく、数値がランダムに変わるため目押しは不可能である。運を天に任せ再度アイコンを押す。


 「………………」

 「……あの」

 「数値が“※※※”なんですが、これは??」

 「わあ、凄いですよ♪確かこれは数値上限以上という意味だったはずです」


 すごい、すごい♪と、興奮しながら喜ぶ店員さんに未だ理解が追いついてない俺、しかし、目だけは目の前で弾む豊かな双丘に釘付けになっている。


 「上限以上ですか?」

 「はい♪色んな魔法がいっぱい使えるという事です」

 「はあ、いっぱいですか・・・」

 「はい♪いっぱいです」

 「良いこと何ですよね?」

 「はい♪良いことです!」

 「そうなんですかー、やりました!」

 「はい♪ふふふ」


 コブシを小さく上げる格好をすると店員さんは自分の事の様に喜んでくれる。

 そんな店員さんを見ていると、俺の中で不思議な喜びが湧き上がってくる。


 「はい♪これで登録は終了です」

 「えっ!もう終わりですか!?」


 店員さんとの楽しい会話もそろそろ終わりとなる、本来の目的はパソコンの修理または購入だったので残念だが致し方ない。


 「では、古いノートパソコンから、新しいノートパソコンにデータの方を移しますね♪」

 「はい、よろしくお願いします。」


 店員さんは古ノートパソコンと新しいノートパソコンをケーブルで繋げてデータを移していく。


 「では、ゲームを登録して頂いたので、こちらの小型端末を差し上げます」


 店員さんが手に取り出したのは、プラスチックの様な質感で白色の大きさが5cmほどの四角い物体を手に乗せて持ってきた。


 「こちらはパソコンと同期して広範囲で情報を利用したり操作したりする小さいパソコンみたいなものです」

 「ん~、つまり携帯端末?みたいな物ですか?」


 店員さんから四角い物体を受け取り眺めつつ、この良く分からない四角い物体の質問をする。


 「はい、詳しいことは分からないんですが、その様な機能があると考えてもらって構わないかと……すいません、なにぶん新商品なので、詳しい説明や取り扱い方法はノートパソコンに入ってますので」


 店員さんが申し訳ないと謝ってくるので


 「あ、いや大丈夫です。分かりましたノートパソコンを見れば良いんですね」


 タダでくれる物にそこまで期待してはいないし、まあ便利なら使うし、不用なら机の引き出しに閉まって、肥やしになってもらおう!


 「あと、もう一つの特典のアクセサリーなんですが、ちょっと待ってて下さい♪」


 店員さんは、一度カウンターに戻ると、手に小さな白い箱を載せて持ってきた。


 「こちらになります♪」


 店員さんが、小さな箱を開けると、緩衝材かんしょうざいになっている黒いスッポンジの上に、1cmほどの大きさで、銀色に光りU字に曲げられた筒が5つ入っていた。


 「こっ、これは!……何ですか???」


 全く用途が不明な銀色の物体に、俺は首を傾げながら店員さんに聞く。


 「はい♪こちらは、左右どちらでも良いので、耳の耳輪の部分に付ける事で音などを伝える事が出来る機械です」

 「音ですか?耳輪に付けるだけで?」


 耳の穴に入れるイヤホンではなく、耳輪型のイヤホンなのかな?昔、骨伝導なんて物もあったから、それに近いものなのかな?


 「はい♪耳に付ける事で他に音を漏らすことなく、直接音を聞くことが出来ます。電車で音楽を聴いていても他の人に迷惑にならずにすみます。ただし、こちらのノートパソコンまたは、小型端末のみ使用可能なのでご理解ください」

 「へ~凄いですね、これも自社製品なんですか?」

 「はい♪当社独自の商品です」


 こんな凄い物もタダなのか、俺、遅れてるな~、世界では、こんな凄いものが無料で配られるくらい溢れているのか、デジタルや科学関係のニュースもっとしっかり読まないとダメだな。

 自分の無知加減を反省しつつ店員さんから箱を受け取り銀色の筒を眺める。


 「こちらの製品は、他にも機能が有りますので、こちらもパソコンに情報が入ってますのでご参照ください」

 「あっハイ、パソコンで確認してみます」

 「はい♪よろしくお願いします。では、パソコンと端末を箱に入れますね♪」


 店員さんがノートパソコンと小型端末の箱を店の奥から持ってこようとする。


 「あっ、箱は結構です。このまま剥き出しで構いませんので、付属品があれば一緒に持って帰ります」

 「えっ!そのままですか?」


 さすがに保障とか返品とかの場合に箱が必要になるので、店員さんに驚き聞き返される。


 「はい、このままで大丈夫です」


 疑問に思うかもしれないが、返品する気も無いので箱は邪魔でしかない。

 不具合があれば電話で聞くか店に持ってくれば良いし、店員さんにも会える!もちろんパソコンについて聞くのだ、やましい気持ちは……ない……かな?


 「分かりました。では、ノートパソコンと小型端末には付属品はありませんので、このままお持ち帰りになりますが、よろしいですか?」

 「はい、大丈夫です。パソコンと端末、あとこのアクセサリー、全部キャリアケースに入れて持って帰ります」

 「はい♪データ移行した古いノートパソコンはどうしますか?」


 店員さんは、ケーブルを取外しデータ移行が終了したノートパソコン2台をテーブルに載せる。


 「あー、古いノートパソコンは処分していただけますか?処分する費用は払いますので」

 「はい、分かりました♪こちらの書類に目を通して頂き、ご納得頂ければここにお名前をお願いします。」


 店員さんが、数枚の書類を取り出して渡してくる。

 俺は書類を店員さんから受け取り内容を軽く読んでいく。

 書類には、個人情報の取扱いについてと、使用済家庭用パーソナルコンピュータ回収委託規約が書かれていた。

 まあ、早い話、個人情報はどうするかと、古いパソコンは資源にすることが書いてあった。


 「これでいいですか?」


 俺は書類に名前を書き店員さんに渡す。


 「はい♪では、古いノートパソコンは当方で処分いたします。あと処分代は掛かりませんのでご安心下さい」

 「えっ、いらないんですか?」

 「はい♪いりません、資源利用されますから」

 「あ~、なるほど」


 つまり、中にある金属を回収して元は取れるのか、納得である。



 「はい♪では、合わせてお会計いたしますね」


 店員さんは、ノートパソコンの箱を、レジカウンターに置き手早くバーコードを読み込ませる。


 「はい♪それでは、合計金額が税込み17万円になります」

 「じゃあコレでお願いします」


 俺は財布からパソコンの修理または購入用にと、あらかじめ用意していたお金17万円を、レジカウンターの上にあるカルトンに置く

 店員さんは失礼しますと断りを入れ、カルトンからお金を取り枚数を数え始める。


 「はい♪17万円あります。こちらレシートになります。ご確認下さい」


 店員さんが、レシートを俺の手に両手で優しく包み返す。

 俺は、店員さんの暖かい手と、優しい笑顔に少し顔を赤らめながらレシートを受け取りポケットに入れる。


 「ありがとうございました。また、何かあれば当店をご利用くださいませ♪」

 「はい、機会があればまた来ます」


 最高の笑顔で店員さんに、また来てくれと言われてしまった。

 たとえ社交辞令でもうれしい、また来ねば!(使命感)

 足元に置いてあるキャリアケースを倒してファスナーを引き中を開け広げると、衣類関係を収めている所がファスナーの付いたメッシュに覆われているので、その上にノートパソコンを置くと、キャリアケースに付いていた用途不明のベルトでX状にノートパソコンを固定することで、荷崩れのしたり衝撃を与えないようにする。

 小型端末とイヤホンみたいな銀色の物体が入った箱を、衣類の隙間に詰め込みキャリアケースを閉める。


 「よしっと!一時はどうなるかと思いましたが、いい買い物が出来ました。どうもありがとうございます」

 「いえいえ、お客様のご要望を叶えられてよかったです♪」


 お礼を言うと店員さんは恐縮しながらも、当然のことと返してきた。


 「それじゃ、失礼します」

 「はい♪あっ、ゲームの方もお願いしますね!異世界での冒険や生活、鍛冶や建築など多くの出会いが待っていますから♪」

 「へ~結構壮大なんですねー分かりました。遊んでみます」


 せっかく店員さんが進めてくれるのだ、少し遊んでみよう


 「はい♪あなただけの物語を作ってください」

 「ははは、了解です!では、行って来ます!」

 「はい♪行ってらっしゃい」


 店員さんの笑顔で若干気持ちが高ぶったのか、俺はこれから冒険に行くような雰囲気で別れを告げ店のドアを開け外へ出る。

 ドアが閉まる直前に


 「かのいて、あなたに幸多さちおおからんことを……」


 店員さんの祈る様な声が、かすかに聞こえた様な気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る