第2話『父親のカケラ』

人には言えぬ苦労の末、

私はついに有名女優へとのぼりつめた。


――それが届いたのは、

ブログで婚約発表した翌日だった。


蒸発していた父の…訃報だった。


3年前、リストラされた父は

私たち家族にその事実を打ち明けられないまま、

姿を消した。


警察の話では、

季節労働者としてあちこちを転々とし、

暮らしていたらしい。


その日――

ネットカフェにいた父は、

突然血相をかえ、どこかへ飛び出したという。


そして、大きな荷物を抱えて

戻ってくるところをトラックに跳ねられた。


運転手の過失ではなく、赤信号に気づかず、

道路を横断した父のせいだ。


死亡時、その父が抱えていた荷物が

遺品として家に届いた。


結婚式で着るスーツだった。

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